あの頃のまま…
耳を澄ませば、彼方から彼女が俺を呼ぶ声が聞こえるような気がして、遠い記憶にある思い出に浸る。
あの頃は、お前が手を振れば俺はすぐに駆け寄って…そうすれば、考えてたことが叶うような気がしていた。
心の中でお前を呼ぶ俺の声は届いたかもしれないが、その返事はいつも返ってこなくて…。
どれだけ手を伸ばしても、お互いに触れることはできなくて、俺は彼女の面影を探していた。
幸せだったあの日々に戻れたら、絶対に手を離さないのに。
あれから何年も過ぎて、みんなどんどん大人になっていくのに、お前のことが忘れられない今もこの場所にいる。
俺の心は、ずっとあの頃のまま…。
道端に咲いていた、お前が好きだった花をそっと摘み取って、俺は胸のポケットに入れた。
もっと色んな思い出を作って、髪から漂う柑橘系の香りごと閉じ込めておけばよかった。
あの日からしばらくの間、俺はそこにいるようでいないような状態だった。
思い出そうとすればするほど、逆に姿が薄れていくような気がしてならなかった。
過ぎ去った時間は戻ってくることはない。だからお前には二度と会えない。わかっているのに…。
色あせていく写真の中で、お前は変わることなく笑ってる。
家が隣同士じゃなかったら、そして幼馴染みじゃなかったら、あんな関係にはならなかっただろうな。
そばにいて当たり前のように感じていたのに…。
あの日に戻れたらと何度も思う。そうすれば、今も傍にいて笑ってるのに…。
あの日の出来事が後悔になって離れずにいる。
心の中のお前は、いつも笑いかけてる。
もし、傍にいてくれたら、強く抱いていたのに…。
時が経つごとに色あせていくアルバムの中で、お前の姿は、写真に写った当時のあの頃のまま…。
…彩花…
<あとがき>
今回で初めて短編を書きます。
PS2の恋愛アドベンチャーゲーム、プリンセスソフトから発売されている夏色の砂時計のOP「went away」を聴いているうちに思いつき、それを少しアレンジして書いてみました。
あちこちバラバラになってるかもしれませんが、それでも読んでいただけたら幸いです。
短文ですが、以上です。