第17話

「生まれ故郷で…」

孝太郎は生まれ育った家に帰らず、ある場所に向かっていた。
それは母親が亡くなって以来、一度しか足を運んだことがない場所だった。
「もう10年近くになるな…」
独り言を呟いて踏み入った場所は、孝太郎の母親と未柚が眠る場所。つまり墓場のある寺だった。
「母さんにもみっちゃんにも、申し訳ないことしたな…」
そう呟きながらまず母親の眠る墓の前に立って花を添え、目を閉じて手を合わせ、それが終わると、隣にある未柚の墓の前に立って同じことをした。
「死んだことを受け入れるのがずっと怖かった。…でも、英次君のおかげであることを悟った今なら…」
先日の英次との対戦のあと、孝太郎はふと思ってこの場所に足を踏み入れた。
「俺はずっと、人とのつながりはどちらかがいなくなったら消えてしまうと思ってた。けど、それは間違いだった。たとえいなくなったとしても、その相手とのつながりは“絆”として残っている。英次君はそれを教えてくれた…」
そのおかげでこの場所に足を踏み入れることができた。孝太郎の英次に対する気持ちは感謝でいっぱいだった。
「俺も、前を向いていかなきゃいけないな…それをわかってても、どこか後ろめたさのある自分がいつもいた。母さんとみっちゃんの死…そして、親父たちを殺した罪を理由にして…でも本当の理由は、自分の弱さだった。それがわかった今、その部分を克服していこうと思う。その分嫌なものを見ることになっても、絶対に目をそむけない」
このときの孝太郎の目には強い意志が宿っていた。
「母さん…みっちゃん…俺の生き様を、空から見ててくれ。それが俺からのたむけだ」
そう言って孝太郎はその場を後にした。

そして、そのまま帰ろうとしたが、寺の出入り口にきたところで思わぬ人に会う。
「沙羅!?どうやってここに!?」
目の前には沙羅が立っていた。しかし、沙羅には自分の出身地を教えてない。それなのにどうやってここにきたのか!?
「出身地は日向君から聞いたの。そのあとは自分で聞きまわって探したわ」
沙羅は荒い息をしており、顔も少し赤かった。
「風邪は大丈夫なのか?」
これを聞いて、沙羅は微笑んで頷いたが、体がよろけて倒れそうになったところを孝太郎が支えた。
「ったく、無茶するなよ」
「だって、日向君に聞いたとき、もう戻ってこないんじゃないかって思えて…それに、少しでも長い間、孝太郎君の傍にいたかった、か、ら…」
声はだんだん呟き声のようになっていき、言い終わると目を閉じて呼吸以外の動作を見せなくなった。
孝太郎は何も言わずに沙羅を何とかお姫様抱っこで抱き抱え、ある場所に向けて歩き出した。

「ここに来るのも、小学校を卒業して以来だな…」
沙羅を抱えたまま、ある場所の前で立ち止まる。その状態で過去を思い出していた。
だが、そこへ一人の男が声をかけた。
「まさか、孝太郎か?」
声をかけられて振り向くと、40代ぐらいの男が立っていた。
「…おっちゃん…」
それは孝太郎の叔父だった。そして、孝太郎が立っている場所は、叔父夫婦が経営している旅館の出入り口だった。
「抱えている子は?寝てるのか?」
「あ、そうだった。昨日から風邪を引いてて、治ってないのに真月町から俺を探しにここまで…」
「そうか…とにかく中に入りなさい」
「うん。また叔母ちゃんと喧嘩になるかもしれないけどね」
これを聞いて叔父は苦笑し、孝太郎を中に入れた。
「おかえり。おや、孝太郎じゃないか」
中で待ってたのは叔母だった。だが、喧嘩してた頃のとげとげしさが全くないことに孝太郎は驚かずにいられなかった。
以前なら、顔を合わせる度に、「まだ生きてたのか」とか言い合いをしていたのだが、今回はそれがなかった。
「それより、この子の布団を用意してやってくれ。酷い熱なんだ」
「わかった。ちょっと待ってておくれ」
叔父が言うと、叔母はすぐに動いて孝太郎を空いている部屋に案内した。
少し後で部屋に入ると、すでに布団が用意されており、孝太郎は何とかして沙羅を寝かせた。
「こんな熱でよく来たねぇ。私の若い頃を思い出すよ」
「叔母ちゃんの若い頃?」
叔母が懐かしむように言うと、孝太郎は聞きながら振り向いた。
「交際してた頃、主人が私に黙ってどこかに行った時、もう帰ってこないんじゃないかって思えてね。そのときの私は片足を骨折してたんだよ。でも、会いたい気持ちが強くて、松葉杖を使ってあちこち探してね…やっと見つけたときに嬉しさのあまりに力が抜けてしまったんだよ」
「そんな無茶をしてまで…女心って本当に複雑だな」
「好きな人にそばにいてほしいって気持ちがある限りは無茶をしてでも会いたくなるものなんだよ」
「俺はそんな気持ちになったことはなかった…そりゃぁ傍にいたいって気持ちはあったけど、会おうと思えばいつでも会えたから…」
これを聞いて叔母はため息をついた。
「男はそれだからねぇ…黙ってどこかに行くと、本当は自分のことを何とも思ってないんじゃないかって不安になるんだよ」
「そっか…」
孝太郎は立ち上がって部屋を出た。なんとなく居辛さを感じたみたいだ。
そのままどこかに行こうかと思ったが、叔母が呼び止めた。
「あの子を放ってどこに行くんだい?」
叔母に任せて出歩こうかと思ったが、沙羅のことを考えると傍にいたほうがいいのかもしれないと思ったのだろうか、考え直した。
「手洗いだ。すぐに戻るさ」
「そうか…それより、今まですまなかったねぇ」
「何のこと?」
「兄のことさ。あんたは何も悪くないのに…」
「いいさ。暴走したとはいえ、俺が親父を殺したのは事実だし…」
「わかってたんだよ。あんたのやったことは正当防衛だってね。でも、まだそれを理解しようとしない自分がいたんだよ」
「しょうがないさ。叔母ちゃんは親父の妹だし、血のつながりのある人間が殺されたとなれば、あのときの叔母ちゃんの態度は当たり前としか思えない。ま、そうなる前も叔母ちゃんとは喧嘩してたから周りは気にしてなかったみたいだけど…」
これを聞いて叔母は苦笑していた。
「とにかく、あの子の看病はあんたがしてやりな。そのほうがあの子にとってありがたいことだと思うよ」
「…わかった…」
孝太郎はそれだけを言って手洗いに行ってすぐに戻った。

「う、うん…ここは…孝太郎君…」
しばらくして沙羅が目を覚まし、見慣れない天井が目に入り、横を見ると孝太郎が座っていた。
「目を覚ましたか…ここは叔父夫婦が経営してる旅館だ。それより、風邪が治ってないのに無茶するなよ」
「だって…何も言わずに行くんだもん」
「そいつは悪かったよ。けど、どうして待てないのかねぇ?」
「不安だったの。本当に…もう二度と会えないんじゃないかって思えてきて…姉さんにも無理を承知で頼み込んでやっとここまで来れたの」
「母さんとみっちゃんの墓参りをしたらすぐに帰ろうと思ってたんだ。そこへ沙羅が来てこうなったってところさ。ある意味、礼を言うべきかな?」
「お礼って?」
孝太郎は今までの叔母との対立のことを話した。
「けど、さっき玄関で会ったときにとげとげしさが全くなかったから驚いたぜ」
「そうだったの…でもよかったじゃない」
「確かにな。とにかくここでゆっくり休んでろ。看病は俺がするから」
「うん…su〜」
沙羅は優しい表情になって、静かに寝息をたてた。孝太郎は無意識に沙羅の髪を撫でていた。
「どうして…沙羅のためにここまでしようとしている自分がいるんだ…?」
孝太郎はずっと気になっていたことを口にしたが、答えは出なかった。

一方、その頃…。
「日向君、海原君はいないの?」
翔の部屋を訪ねた留美が聞いた。
「あいつなら、生まれ故郷に行ったよ」
「生まれ故郷?」
「群馬の草津だ。あいつを追いかけて矢神さんも向かったよ」
これを聞いて留美は驚いた。
「そんな…あんな体で…」
「俺も止めたけど聞かなかったんだ」
「それだけ海原君の傍にいたいのでしょうね」
「…だろうな…」
この後、二人は出かけた。

「う、うん…もう夕方なの…」
夕日が瞼に当たったときの眩しさで沙羅は目を覚ました。
「…孝太郎君…」
横を見たとき、壁にもたれて俯いたままの孝太郎がいた。どうやら寝ているようだ。
「体の調子はどうかな?」
叔母がそっと入ってきた。
「少しボーっとします」
「風邪だからしょうがないよ。それと、1時間ぐらい前に孝太郎はあんたの家に電話して迎えに来るように頼んでたよ」
これを聞いて沙羅は驚いた。
「あんた想いなんだねぇ。孝太郎は気付いてないみたいだけど」
「…孝太郎君…」
「初恋の相手、みっちゃんが死んでしまってから、異性との関わりを拒絶してずっと一人だったからねぇ…。心配だったんだよ。このままじゃぁ幸せさえも拒絶するんじゃないかってねぇ…」
叔母が言い終わると、外で車が止まる音がした。
「どうやら迎えが来たみたいだねぇ。孝太郎、そろそろ起きな」
そう言いながら孝太郎の肩をゆすって起こした。
孝太郎は少しボーっとした頭で叔母に言われるがままに沙羅をおんぶして外に行った。
「さ、乗って」
車から降りた京子が後ろのドアを開け、孝太郎は先に沙羅を座らせてその後に座った。
沙羅は少し荒い息をしており、座っているのがやっとなのか、孝太郎の肩にもたれた。
「早く行きましょう。このままだと沙羅の風邪が悪化します」
「そうね」
京子は運転席に座ってドアを閉めると車を発進させた。
だが、沙羅を気遣ってか、スピードはあまり出さなかった。
「旅館を見つけるまでかなり迷ったわ。でも、帰りは楽ね」
「そうでしょうね…」
「そうそう、明日のことなんだけど」
「明日?」
「うん。学校は休んでいいから、その代わりに沙羅の看病お願いしたいの」
「わかりました。沙羅の風邪が悪化した理由に俺も絡んでますから。その責任は取るべきでしょうね」
「何だかんだ言って、結局は沙羅のこと考えてるのね」
孝太郎は俯いて何も言わなかった。
この後はお互いに何も話さず、車は京子の家に真っ直ぐ向かっていた。

やがて、夜になって京子の家に着き、孝太郎は沙羅をおんぶして家に入り、ベッドに寝かせて帰ろうとした。
だが、沙羅の傍を離れようとしたとき、沙羅が孝太郎の袖を力の入らない手で掴んだ。
「お願い…傍にいて…」
沙羅の必死な頼みに孝太郎は戸惑っていると、京子が孝太郎の肩に触れて言った。
「沙羅の言うとおりにしてあげて。沙羅の不安を取り除けるのは海原君しかいないんだから」
「…わかりました…」
これを聞いて京子は微笑み、沙羅の部屋から出て行った。
「…ありがとう。私のわがまま聞いてくれて…」
「あんなに必死に頼まれたら断るわけに行かないだろ」
これを聞いて沙羅は微笑んだ。
二人の間には言葉はいらない雰囲気だった。が、この雰囲気を壊すものがあった。
グ〜〜〜〜…
「「う…」」
二人の腹が凄い音を立てて空腹を訴えた。二人とも朝しか食べてないから無理もない…。
「お、俺、お粥作ってきてやる。少し待っててくれ」
「う、うん…」
孝太郎はいたたまれない気持ちになって部屋を出ようとしたが、京子が二人分の食事を持って入ってきた。
「さっきの音、部屋の外にまで聞こえてたわよ?沙羅は風邪気味でも食欲があるみたいだからちょっと安心しちゃった」
そう言いながら二人分の食事を乗せたお盆を置いて部屋から出る。が、出入り口で振り向いて真剣な表情で言った。
「本当に、海原君が弟になってくれたらって思うの。兄さんも気に入ってるみたいだし」
「先生…でも俺は…」
孝太郎は俯き加減ではっきりとした返事を出せなかった。
「ゆっくり考えればいいわ。きっと気持ちをはっきりさせるきっかけができるかもしれないし」
「そうよ。私はいつでも返事を待ってるから」
沙羅はいつの間にか体を起こしていた。
「海原君。沙羅をお願いね」
京子はそれだけを言って部屋を出て行った。
孝太郎は複雑な気持ちになりながら食事に手をつけ、沙羅もお粥を食べ始めた。
二人は食べながらいろいろ話した。

やがて食べ終わり、それを見計らったかのように京子が入ってきて片付けるために器を乗せたお盆を持って出て行った。
「今日は一晩中ここにいるから。何も心配するな」
「なら、お願いがあるんだけど…」
いつの間にか沙羅は横になって布団に入っていた。
「どんな?」
「眠るまで、手をつないでてほしいの」
そう言いながら布団から片手を出す。
「俺でいいのなら…」
「孝太郎君にしか、こんなことは頼まないわ」
「そうか…」
孝太郎はおもむろに手を出して沙羅の手にそっと触れる。
沙羅の手は暖かく、同時に優しさを感じさせた。
(そういえば、みっちゃんとも一度だけ手をつないだことがあったな…)
そんなことを思いながらも手を離そうとはしなかった。
沙羅はもう片方の手で孝太郎の手を包むように触れ、そのまま眠っていった。
(幸せそうだな…俺は何もしてないのに…むしろ迷惑ばかりかけて…)
孝太郎はまだ未柚のことが振り切れていないために沙羅の気持ちを受け入れることができずにいた。

翌日の10時ごろ、沙羅はカーテンを通して入ってくる朝日で目を覚ました。どうやら京子は二人を気遣って起こさずに仕事に行ったみたいだ。
「ふぅ…体調は相変わらずか…ん?…孝太郎君…ずっといてくれたの…」
沙羅は自分の体の調子を確かめた後、体を起こそうとしてふらついたのでため息をついたが、手に何かが触れていることに気付いて見てみると、孝太郎が手をつないだまま寝ていた。
「…ありがとう…」
優しい表情で言いながら孝太郎の頭を撫でた。
そうしているうちに孝太郎が目を覚ました。
「う、うん…沙羅…調子はどうだ?」
半分寝ぼけた状態でも体調のことを聞く。孝太郎なりに沙羅のことを心配しているみたいだ。
「昨日よりはマシになったって感じね」
「そうか…先生に言ったように、今日はずっとここにいるから」
沙羅は微笑んで頷く。
「朝飯まだだろ?お粥だけど作ってくる」
そういって立ち上がる。
「うん。ねぇ」
「何だ?」
振り向きながら聞いた。
「今度、お粥の作り方、教えてくれない?」
「ま、いいけど」
「ありがとう」
聞き終わってから台所に向かい、調理を始めようとすると、テーブルに書置きがあったのでそれを手に取った。
「海原君へ。今日1日、沙羅の看病をお願いします。台所は自由に使ってくれてかまいません。ある程度のものは冷蔵庫にあるので外に行く必要はないと思います。  京子」
孝太郎はどこからかペンを持ってきて見たことを確認させるための印をつけた。
そして、自分の分とお粥を調理し始めた。

調理が終わり、沙羅の部屋に行く。
「待たせたな」
「しょうがないよ。料理はどうしても時間がかかっちゃうから」
「そうだな。とりあえず、飯だ。と、起きれるか?」
孝太郎に聞かれ、沙羅は体を起こそうとしたが、頭がふらついたみたいだ。
「どうやら無理があるみたいだな」
そう言って沙羅を壁にもたれさせる。そして、鍋から小鉢に適量移して蓮華ですくってフーフーしてそれを沙羅の口元に持っていった。
「ほれ」
これを見て沙羅は顔を赤くした。
「そ、そこまでしなくていいわよ」
「前に俺が風邪を引いたとき、沙羅は俺に同じことをやったんだぜ?沙羅だけって不公平じゃないのか?」
「うぅ…」
沙羅は観念して孝太郎のなすがままに食べさせてもらった。
「味、どうかな?つい自分好みの味付けにしてしまったから合わないかも」
「そんなことないよ。それに孝太郎君の作ったお粥がまた食べれて嬉しいよ」
「ただのお粥だぜ?」
「それでもよ。高価なものを無理してプレゼントされるような外見だけの嬉しさより、ただこうして傍にいてくれるほうが、中身が充実してるから…」
「そうか…」
この後はいろいろ話しながら食事をした。

沙羅は孝太郎に、本棚のものは適当に読んで構わないと言ってから薬を飲んで眠り、孝太郎は小説を見ながらもずっと沙羅の傍にいた。

時間はあっという間に過ぎ、夕方になって京子が帰ってきたために孝太郎は帰っていった。

2・3日ほどして、沙羅は風邪が治ったので登校した。だが、友達から妙なことを聞かれた。
「最近、海原君とうまくいってるんだってね?」
「そうかな?」
友達が冷やかすように言ったが、沙羅は首を傾けるだけだった。
「とぼけたってだめよ。この前、風邪で休んだとき、海原君が一日中看病したそうじゃない」
「な、どうしてそれを知ってるの!?」
「もう学校中で噂になってるわよ」
これを聞いて沙羅は頭を抱えた。
「で、どうなの?」
「どうなのって…私の片想いよ」
「あらら…思ったより硬派ねぇ」
「それでもいいの。私が勝手に孝太郎君のことを好きになっただけだから」
「ふ〜ん。でもね、硬派の人って振り向かせるのは難しいけど、振り向かせたとき、その人のことを一途に見続けるから、苦労した甲斐があったって思うわよ」
「そうなんだ…」
沙羅は少し明るい顔になってどこかに行った。
「私も、海原君に告白して振られた一人だって知らないでしょうね…」
沙羅がいなくなってからこんなことを呟いていた。

12月の中旬になり、中国拳法、日本拳法、空手の部員が集まって冬休みの合宿の話が出た。
半年前と同じように場所は春江が経営している旅館で、3泊4日とのこと。
みんな特に断る理由もなかったので参加することにした。

冬休みに入り、合宿のために京都に向かい、そして旅館についた。
孝太郎は正宗を隠すために少し大きめのバッグで来ていた。
「よくぞおいでなさったの」
入り口で春江が立っていた。
「またお世話になります」
京子が丁寧に挨拶した。
「ほっほっほ。相変わらず元気じゃのぉ」
この後は部員が一人づつ挨拶していき、孝太郎が残っていた。
「半年振りですね」
「そうじゃのぉ。正宗は持ってきたか?」
「このとおりです」
そう言ってバッグから正宗を取り出して見せた。
「ほう、抜けないようにしておったのか」
「これが、俺が正宗を持つことの条件ですから」
そう言ってバッグに正宗をしまい、中に入っていった。
「あやつ、影がなくなった上に前よりも一段と強くなりおって…」
そう呟く春江の表情は穏やかだった。


<あとがき>
故郷で墓参りをし、新たな決意をした孝太郎。
その孝太郎を風邪を引いた身でありながら追ってきた沙羅。
和解した孝太郎と叔母。
翌日、孝太郎は1日中沙羅の看病をすることに。
だが、孝太郎は沙羅のために何かをしようとしている自分がいる理由に気付かない。
冬休みの合宿で、春江に再会した孝太郎たち。
合宿ではどうなるのか?
今回はここまでです。
短文ですが、以上です。

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