第22話

「対決。そして…」

律子の審判の下で、誠司と翔の対決が始まった。
どぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!
対決が始まると、誠司が怒鳴り声を上げてストレートを出しながら突進した。
だが、翔は焦ることなく、誠司のストレートを掴んで巴投げを繰り出した。
「ぐっ」
誠司はそのままヘッドスライディングをしたように倒れるが、すぐに立ち上がる。
「このぉ!!!」
誠司は再び翔に向けてダッシュストレートを繰り出す。
「攻撃がワンパターンだぜ?」
「やかましい!!」
怒りに任せての一撃を何度も繰り出すが、翔は冷静に回避している。
「あ〜あ。誠司は相変わらずだね」
「翔に強烈な一撃を当てたって聞いて、少しはマシになったかと思ったけど、英次君の言う通りだな」
英次と孝太郎は呆れた表情で見ていた。
「食らえ!!!」
誠司は爆裂拳の後に昇竜三斬華を繰り出したが、翔はすべて防ぎ、がら空きになった誠司の腹に掌の一撃を当てて吹っ飛ばした。
「攻撃が単純すぎる。そんなんでよくここまで来れたな」
「やかましい!!わいに小技をやれってのは、赤ん坊に漬物石を持たすのと同じなんじゃ!!」
翔が言うと、誠司は怒鳴った。
「そうか…ならあんたと俺の違いって奴をここで見せてやるぜ」
「なに?」
翔は焦り一つ見せずに言う。誠司は荒い息でいろんな表情をしていた。
「あんたの技をそのまま使わせてもらうぜ。そして忘れてることを思い出させてやる」
そう言ってダッシュを繰り出し、誠司が攻撃を当てようとしたが、翔は誠司の爆裂拳を繰り出した。
「な!?ぐっ!!」
翔の連続パンチは誠司の爆裂拳よりもスピードが上だった。
誠司は驚きながらも防ぐだけで精一杯だった。
そこへ、翔は昇竜三斬華を繰り出し、見事にヒットしたのだった。
「ぐはっ!!」
誠司は受身を取れずに床に激突。その少し後に翔が着地した。
「っく…何で、おんどれの技は決まるんや!?」
「半年前、孝太郎に言われたことを忘れたか?」
「半年前やと?」
誠司は翔に言われて半年前の合宿の出来事を思い出してみた。
(確かあの時も…あっけなく負けてもうて、それが悔しくてたまらんかった…そんなわいに青い龍が…!)
「どうやら何か思い出したみたいだな」
「心技体…戦うときの目的か…けどな、わいはおんどれらみたいに心ができとらんさかい。突進するしか他にないんや」
思い出してがっくりとなる誠司に、翔が歩み寄り、しゃがみこんで話しかけた。
「俺も、あんたと同じような時期があった。始めたばかりの頃、あんたみたいに一発も当たらなくて、しかも後から始めた奴がどんどん上達して悔しい思いをした…」
これを聞いて誠司は顔を上げる。
「そんなときに孝太郎が声をかけたんだ。「お前にとって空手って何だ?」ってな…「目的がないのならやめたほうがいい」って言われて…しばらくは孝太郎と顔を合わせ辛かった。けど、孝太郎に言われたことを思い出して、それを伝えた」
「…」
誠司は姿勢を直し、翔の話を黙って聞いていた。
「“いつかは自分の身を自分で守らなければいけないときが来る”…これを聞いた孝太郎は俺に格闘の基本を教えてくれた。それが、心技体だったんだ」
「一番重要なのは“心”だ。精神的に未熟だと、体と技がどれだけ強くても勝利を得ることは出来ないと言っても過言じゃない」
いつの間にか翔の横にいた孝太郎が言った。
誠司はこれを聞いてガックリとなる。
「そうやったな…半年前に言われたこと、わいはみんな忘れて攻撃一辺倒になっとった…わいの負けや」
そう言って誠司は立ち上がろうとするが、ダメージが大きかったのか、足がもつれてこけた。
「ちょっと、大丈夫?」
美希が駆け寄って誠司の体を支えた。
「っく…大丈夫や。一人でも歩ける」
そう言って美希を突き放そうとしたが、体に力が入らず、そのまま美希に連れられて行った。
「あいつが心を成長させるきっかけは美希さんが作ってくれるだろうな」
「翔の言うとおりだな。ま、10年後も相変わらずチンピラなんだろうけど…」
翔が言い、孝太郎も相槌を打つように言うと、二人で少し笑った。
「さて、日向君はこの後の対戦相手を海原君と英次君とお婆ちゃんの3人から選ぶことが出来るけど、どうするの?」
律子が歩み寄って翔に聞いた。
「そうですねぇ…半年前はあっさり負けてしまったけど、もう一度お婆ちゃんと戦いたいです」
これを聞いて全員が驚く。
(本気か!?)
一番驚いたのは孝太郎だった。
「翔…」
「心配するな、孝太郎。半年前にあっさり負けたからその復讐なんて思ってない。俺はただ、自分の力を試したいだけだ」
翔の目は活き活きしていた。それを見た孝太郎は翔の言葉に嘘が微塵もないことを悟った。
「これは沙羅の受け売りだけどな、お前は一人で戦ってるんじゃないってことを忘れるな」
そう言って観客の中に入っていく。
(孝太郎…そうやってお前はいつも俺のことを見ててくれた。お前が親友でよかったぜ)
「準備はいいかの?」
いつの間にか、春江が翔の正面に立っていた。
「いつでもいいです」
翔が言うと、律子が間に立った。
「両者、構えて」
律子が言うと、春江は波動を上昇させた。英次と同じぐらいの体格をしているのに、みんなには大きな山のように見えた。
対する翔は炎のような赤いオーラを放った。その姿はまさに“紅蓮の炎を纏いし赤い虎”だった。
みんなはただ驚いて見ていた。
かぁあああああああああ!!
春江の気迫の入った声と、半年前に孝太郎と対戦したときよりも素早い怒涛の連続攻撃が繰り出された。
だが、翔はオーラを放った状態で目を閉じて攻撃を両腕で全て防いだ。
「わぁ、まるで風を受け流してるみたい」
「英次君の言うとおりだ。けど、いつの間にオーラを放てるようになった?」
英次は笑顔で見ていた。孝太郎は翔と手合わせをすることはよくあったが、そのときに気孔術を使ったところを見たことがなかった。
「猛虎爪襲拳!!」
翔は全身から放っていたオーラを両腕に集め、赤い炎のような両腕を振り回した。
(昨日よりも威力が上がってる。何があいつをあんなに強くした!?)
孝太郎はただ驚くばかりであった。
春江は翔の攻撃をあっさり回避し、逆に翔の腹に掌の一撃を当てて動きを止めた。
「うっ…」
「技は見事じゃが、なっとらん部分がいっぱいあるぞい」
「だろうね。忠告するのはいいけど、自分の体も心配したほうがいいですよ?」
翔はそう言いながらバックステップで間を空ける。
「何を言っとるんじゃ?…!」
春江は翔が言ったことが気になって自分の体を見てみると、空手着の左肩にわずかに虎に引き裂かれたような跡があった。
「いつの間に…」
春江は顔に出さなかったが、驚きを隠せなかった。触れた感じが全くなかったからだ。
「まだまだこれからですよ?」
「そうじゃな」
翔が不適に笑って言う。春江は気を取り直して構えた。
春江は気を集めて放とうとしたが、翔も炎のようなオーラを全身に集めた。
「何をするつもりだ…翔が何をやろうとしてるのか全くわからない。まさかあいつ、無心の境地の一つって言われてる、闘聖になったのか!?」
(孝太郎…お前のおかげでここまで強くなれたぜ。向ける相手は違うけど、見せてやるぜ)
翔はオーラを纏った状態で春江にダッシュに突っ込む。
春江は掌抵波を放ち、翔のダッシュが止まって押し返されるかと思ったが、そうなることはなかった。
「我流奥技!!バーニングタイガークラッシュ!!!
翔は足を踏ん張って吹っ飛ぶのを防ぎ、春江が放ち終わった後、残りのオーラを纏って春江に体当たりした。
春江は吹っ飛んで背中から壁に激突し、翔は力が抜けてうつ伏せに倒れた。
孝太郎は翔に駆け寄り、仰向けにさせた。
「大丈夫か?翔」
「孝太郎…見たか?俺の奥技を…」
「しっかりと見させてもらったぜ…けど、技の出し方を間違えてる」
「そうか…」
「だけど、それは基本しか教えなかった俺に原因があるな。今度は気孔術を教えてやるから、しっかりと覚えろよ」
「あぁ…お前が親友で、本当に、よかった…」
言い終わると、翔は静かに眠っていった。その表情は何かをやり遂げて満足したみたいだった。
律子は勝敗の判定を言わなかったが、それでよかったのかもしれない。
「青島さん。翔を頼む」
「う、うん」
孝太郎は翔を場外へ運び、留美に言って春江のところへ行った。
「さすがにやりおるのぉ」
春江は背中を押さえながら立ち上がった。
「大丈夫ですか?」
「心配するでない。じゃが、半年であんなに強くなるとは…龍の指導が理由じゃろうな」
「俺は攻撃の基本を教えてるだけで、気孔術は教えてません。翔が気孔術を使えるようになったのは、英次君の影響でしょう」
「そうか。次はお主と英次の番じゃな」
春江はそう言って観客の中に入っていった。
英次は真ん中に立っており、これから孝太郎との手合わせが始まることでわくわくしているみたいだった。
「考えてることが表情に出るからすぐにわかるぜ」
苦笑しながら呟いて英次の正面に立つ。
「時間は無制限の完全ノックアウトで場外もなし。準備はいい?」
律子が聞くと、二人は何も言わずに頷いた。
「では、両者、構えて」
二人は同時に構える。お互いに真剣な表情でオーラを放っている。
孝太郎は雲一つない空のように澄んだ青いオーラ。英次は雪のように汚れ一つない真っ白のオーラ。
そして、そこには影が放つ黒のオーラもあった。
(やはり、あの時よりも強くなってたか…これが英次君の絆の力に秘められた『無限の可能性』か…)
(以前とは段違いの強さを持ってる。まるで、龍が襲い掛かってくるみたいだ)
観客たちは二人の気迫に圧倒される。春江もその中の一人だった。
(もしや、“蒼天に舞う青い龍”が目覚めようとしておるのか…?)
「始め!」
律子はすぐにバックステップで後ろに下がる。
その瞬間、二人の攻撃が始まった。
「掌抵波!!」
英次はオーラを利用しての奥技を放ったが、孝太郎は左の裏拳で弾き、右のストレートを英次の胸に当てたが、英次は浮体で回避し、同時に孝太郎の右腕を掴んで巴投げを繰り出した。
孝太郎は流れに乗るようにして足から着地し、英次に向けて蹴りを放ったが、そのときには英次は手を離してバックステップで間を空けていた。
今度は英次からダッシュで間合いを縮め、孝太郎は迎え撃つように右のストレートを放ったが、英次は裏拳で弾いて蹴りを当てた。
「っく…」
「仁美の裂蹴拳(れっしゅうけん)だよ」
孝太郎は胸に英次の蹴りをまともに食らって硬直する。が、それもつかの間。孝太郎は飛び膝蹴りの後に蹴りをストレートのように繰り出したを当てた。英次は顔面に食らったが、浮体でダメージはなかった。
「そっちがそれなら、こっちは翔のタイガースラッシュキックだ。けど、絆にそんな使い方があるなんて…」
「えへへ♪」
英次は屈託のない笑みを浮かべた。
(本当に、英次君との手合わせでは、教えられることばかりだ)
そして、英次は飛び上がったと思うと、斜めに下降しながら蹴りを繰り出した。それを見た孝太郎はいつも以上にバックステップで間を大きく空けた。その理由は、英次が着地したときに蹴りを繰り出していたからだ。
「やっぱり、キムさんの飛翔脚(ひしょうきゃく)は効かないね」
「最初見たときはビックリしたけどな」
孝太郎は少し間を縮め、連続蹴りを繰り出そうとしたが、英次にはすぐに五連脚だとわかった。
だが、孝太郎は右足で2発の蹴りを当て、3発目の蹴りを払うようにして繰り出して左の踵蹴りを繰り出し、英次は防いだが、その後の右の払い蹴りを顔の側面に食らって倒れた。
「あうっ!」
英次は転倒した状態で孝太郎に向けて蹴りを繰り出したが、バックステップで間を空けた孝太郎に当たる事はなかった。
「そんな…キムさんの手紙に書いてあった五連脚と出し方が違う」
そう言いながら体を起こす。
「これは沙羅が自分なりに編み出した五連脚だ。違ってて当たり前さ」
孝太郎が言うと、沙羅は顔を少し赤くした。
英次は孝太郎に向けてダッシュでストレートを繰り出す。
孝太郎は横に回避して英次の腹に膝蹴りを当てようとしたが、それは英次の体をすり抜けた。
「な!?…これは…残像…」
英次は足に気を集約させて残像現象を生み出したのだった。驚く孝太郎をよそに流水のような動きで英次の残像が孝太郎の周囲を取り囲んだ。
(こうなったら…)
孝太郎は気を集めてそれを一気に開放した。爆発音とともに少し強めの風が周りに吹く。英次は風でバランスを崩し、残像は全て消えた。
それを見た孝太郎はダッシュで肘打ちを繰り出す。だが、英次は落ち着いて浮体で回避。
「加奈ちゃんの破攻拳(はこうけん)を…」
「見よう見真似だけどね…」
この後、英次は弧空砲を繰り出した。が、
「掌抵波!」
いつの間にか、孝太郎は気を集めており、英次の足が孝太郎の手に触れた瞬間、孝太郎は気を英次に向けて放った。
「うわあっ!!」
英次は吹っ飛んで壁に激突。気を張ってたものの、ダメージはかなりあったようだ。
(ぐっ…孝太郎さん…やっぱりすごいよ…技を見よう見真似で自分のものにするなんて…しかも、絆の意味を教えただけで…こんなに強くなるなんて…)
英次は苦しみながらも立ち上がった。
「孝太郎さん…」
「ん?」
「やっぱり、強いね」
「そういう英次君こそ…」
「でも、こんなに充実した戦いは経験したことがなかった…」
「俺もだよ。手合わせでこんなに楽しい経験はしたことがなかった。今の俺があるのは、英次君のおかげだよ」
「お礼も込めて、精一杯の気持ちを伝えるよ」
英次は言いながら目を閉じて右手を腰に構える。
「礼を言うのは俺のほうだ。絆を知らなかったら、俺は今でも人との関わりを拒絶してた。英次君のおかげで、少しだけど前向きになれたよ。その礼の意味で、俺も真っ向から受け立つぜ」
孝太郎も左手で右の手首を掴み、右腕を腰に構えて気を集め始めた。
(この一発に俺の精一杯の気持ちを…)
(英次君のおかげでここまで強くなれた…それを証明するために…)
やがて、孝太郎の右腕は彗星のような光を放つ。
(仁美…誠司…お姉ちゃん…加奈ちゃん…キムさん…お母さん(川井先生)…夏目さん…歌穂さん…お婆ちゃん(春江)…孝太郎さん…翔さん…沙羅さん…京子先生…青島さん…佐村さん…月山さん…ニャン太…そして、天国にいる両親…)
英次は集中しながらみんなのことを想った。
(沙羅…矢神先生…恭平さん…翔…青島さん…達夫さん…英次君…川井先生…親父…母さん…そして…)
孝太郎も英次ほどではないにしても、みんなのことを想った。
だが、二人には共通してるものがあった。それは自分の影との絆である。
「最大奥技!!」
「秘奥技!!」
英次は目を大きく開いて突進しながコークスクリューを繰り出し、孝太郎も左手を右手首から離し、足の裏に集めていた気を破裂させてその衝撃を利用してダッシュした。
「聖光拳!!」
「(みっちゃん!)真・彗星拳!!」
英次のコークスクリューに孝太郎のストレートがぶつかり、英次はヒットしたときに右手首を左手で掴んで爆発的に気を放出した。
互いに堪えるような呻き声を出して押し合う。
その状態がしばらく続き、お互いに一歩踏み込んだ瞬間、爆発と同時に音が響き渡り、孝太郎と英次は衝撃で吹っ飛び、板張りの壁にめり込んだ。
「孝太郎君!」
「英次!」
沙羅と仁美は同時に駆け出し、それぞれ孝太郎と英次に駆け寄って壁から引きずり出したが、二人とも目を閉じたまま動かなかった。
やがて、孝太郎がゆっくりと目を開けた。
「…う…英…次…君…は?」
孝太郎はかすれ声で沙羅に聞く。
「壁にめり込んだのを仁美さんが引きずり出したわ…どこ行くの?」
孝太郎は力の入らない体でありながらも立ち上がってふらふらと歩き出した。
それを見た沙羅は肩を持とうとするが…
「俺一人で…行かせてくれ」
そう言って倒れそうになりながらもゆっくりと英次のところに行った。
一方、英次は…。
「…仁…美…」
「英次…大丈夫?」
「う、うん…それより、孝太郎さんは?」
「ここに…いるぜ」
孝太郎が搾り出すような声を出すと、仁美は驚き、英次は安心したような表情になった。
「孝太郎さん…あの一発は凄かったね…」
「英次君こそ…聖光拳の威力は…前より凄くなってた…」
「当たったとき、何か強いものを感じたよ…もしかして、大切な人?」
「よくわかったな…とはいっても、もう会えないんだけどな…」
これを聞いて、沙羅は孝太郎にとって大切な人が自分ではないことに少しショックを受けた。
「でも…孝太郎さんの中で…生きてるみたいだったよ」
「そう…か…よ…か…っ…た…」
この言葉を最後に、孝太郎は後ろに倒れ、そこを沙羅が駆け寄って支えた。
「孝太郎さん…心に傷を負ってたんだよ…でも今は、沙羅さんのことも、大切に思って…る…よ…」
英次も力尽きてゆっくりと目を閉じて眠っていった。
「孝太郎君はきっと、大切な人が自分の中にいるか、確かめたかったのかもしれないわね」
「そして、英次はそれを察して…聖光拳で答えを出した」
「心技体を備えた二人は、言葉よりも戦いでお互い通じ合ってたんじゃないかな?」
いつの間にか目を覚ました翔が近くにいた。
「それに、言葉だけでは確信が持てなかったのじゃろう」
春江も近くにいた。
仁美は英次を担ぎ、沙羅と翔は孝太郎を担いで部屋に運んでいった。

孝太郎と英次は同じ部屋で用意された布団に横になっていた。二人とも呼吸以外の動作を見せない。
「大丈夫じゃよ。二人とも消耗した体力を取り戻すために冬眠状態になったのじゃ。しばらくすれば目を覚ますじゃろう」
眠っている二人のほかにいたのは、沙羅、仁美、春江の3人である。
沙羅と仁美があまりに心配そうな表情をしていたので春江が様態を説明したのだ。これを聞いて、二人は少し安心した。
「さて、わしは道場に戻るとするかの」
春江が立ち上がって部屋を出て行った。
「不器用な二人ね」
「そうね。こうしなきゃぁお互いの気持ちを伝えられないなんて」
仁美が言い、沙羅が応えると、二人はくすくすと笑った。

道場では、壁を直すために板の張り替えを部員たちでやっていた。
「派手にやってくれたなぁ…」
「そうやなぁ…あいつらの強さは次元を超えとるわ」
翔と誠司が話していた。
「二人とも、手が動いとらんぞ」
「わあっとるわい!!」
春江が注意し誠司は反論した。
「孝太郎と英次君は?」
「しばらく寝かせておけば大丈夫じゃよ」
翔の質問に春江が答え、翔は安心した。が…
!!!
「な…一瞬やったけど、何や今のは!?」
「わからない。けど、今まで感じたことがない強大な気配だった」
「そんなわりに、汚れが全くなかったぞい…(まさか…)」
誠司、翔、春江だけでなく、他のみんなも驚いて硬直していた。

一方、孝太郎と英次が寝ている部屋でも…。
「な、何!?今のは…」
沙羅が驚き、
「わからない…」
仁美も驚いていた。
二人で部屋の様子を見てみたが、変化は何もなかった。もちろん、孝太郎と英次の状態もだ。


<あとがき>
誠司と翔の対決。
結果は翔の勝ちで終わり、敗因を教えられて改心(?)した誠司。
その後の翔と春江の対決。そのときに翔は奥技を発動させ、周囲を驚かせる。
そして、孝太郎と英次の対決では、二人は絆の力を使っての対決になった。
聖光拳と真・彗星拳の激突。お互いの、特に孝太郎には何か得るものがあったようだ。
その後、全員が感じたとてつもなく強大な気配の正体は!?
次回、合宿が終わってその後、新たな展開が…。
今回はここまでです。
短文ですが、以上です。

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