第12話
「その後…」
「いてててて…」
「これぐらい我慢しろ。この程度で済んで本当によかったぜ」
俺はあの交差点の近くにある診療所で治療を受けていた。傷口がしみる…。
彩花は待合室で俺の治療が終わるのを待っている。
「わしはあの交差点で何度も事故を聞いてたんだ。その度に何も出来ない自分に罪悪感を感じることしか出来ないのが辛かった…」
患部の治療や消毒を済ませ、包帯を巻きながら寂しそうに言った。
「実は俺、あの交差点での事故の被害に遭うのは2度目なんです」
過去を振り切ったとはいえ、去年の事故のことは今でも鮮明に覚えている。
あの時は午前中で、歩行者に死者は出なかったものの、運転手だった小夜美さんが…。
「そうか…よく生きてたな…よし!これで大丈夫だ。事故の原因のことはわしにまかせておけ」
「ありがとうございました」
俺は椅子から立って深々と頭を下げた。
「なぁに。医者として当然のことをしたにすぎんよ。さ、外でかわいい姉ちゃんが待ってるぜ。早く行ってやんな」
「はい!」
俺は診察室の扉を開け、待合室に出ると彩花が椅子から立ち上がり、小走りで寄ってきた。
「智也!」
「心配かけたな。でも、もう大丈夫だ」
俺は左手で彩花の右肩に安心させるように触れた。
「うん。よかった。本当に…」
その後、二人で医師に礼を言って診療所を後にした。
彩花を駅まで送っている途中、色々な話をしている。
「ねぇ、智也」
ふと彩花が聞いてきた。
「ん?」
「宿題やった?」
「あぁ〜!!!!…全然やってない〜」
最初に大声を出し、後は沈み声になった。
「はぁ〜ぁ。だらしがないわねぇ。ムンクの叫びみたいになっちゃって」
彩花はため息をついて肩を落としながら言った。
「ほっとけ。バイトとかでする余裕がなかったんだよ!」
「ふふ」
「そう言う彩花は?」
「やったけど見せてあげないわよ」
意地悪っぽく言う。だが…。
「ふ〜ん」
「あら、動揺しないのね?」
「だって、彩花が見せてくれなくても、村野さんやかおるがいるからな。いざとなったら双海さんに頼ればいいし」
「う…わ、わかったわよぉ、んもう!見せてあげればいいんでしょ!?」
彩花は焦ったような表情だった。彩花の性格を逆手に取った方法をいつからか俺は使っていた。
(小夜美さんもそうだったからなぁ。やっぱり姉妹は似てるよなぁ)
「さっすが彩花。一番に頼りになりそうな気がしてたんだ」
「たまには自分で何とかしなさいよねぇ…」
そう言ってため息をつく。
そんなこんなで駅に着いた。
乗り場には丁度電車が来ていた。
「それじゃぁまたね」
「ああ、気をつけてな」
彩花は電車に乗り、微笑みながら手を振る。
俺も軽く手を振った。
扉は閉まり、動き出す。
彩花はずっと小さく手を振っていた。俺も軽く手を振る。
俺は電車が見えなくなった後にその場を後にした。
8月5日
今日はバイトがなければ誰とも何の約束もしてない日。
ゆっくりするには丁度いい日だ。
だが、俺の場合は今日まで宿題に全く手をつけてなかったためにそうも言ってられない。
午前8時半時ごろに起き、着替えて顔と手を洗い、朝飯に焼いてトーストを塗った食パンを2枚かじった後、自分の部屋の窓を開けて椅子に座り、横にかけてあった鞄を手にとって中を見ると何枚かのプリントが入っていた。
一枚ずつ内容を確認すると、古典・数学・日本史・英語だった。
日本史は古典の次に得意な分野だから助かるが、数学と英語は肩を並べるぐらい大の苦手だ。
まずは一番得意な古典から片付けることにしよう。
筆記用具入れから取り出したシャーペンを手に取り、芯を出して空欄を埋め始めた。
(ふぅ…。古典は知ってるものばかりだから助かる。小夜美さん、本当にありがとう)
色々考えているうちに古典のプリントは終わった。
古典のプリントを鞄にしまい、日本史のプリントを取り出してやろうとした時だった。
レーミーミレミファソソ♯ソーソファソファミレミー・シドシラシー♪
ポケットに入れてある携帯が鳴り、相手が誰かを知ってた俺は取り出して仕方なく出た。
「何の用だ?信」
「何だはないだろ?まぁいい。これから皆で図書館で勉強会をするんだけど来ないか?」
(せっかく一人でいい気分(?)に浸っている時にこの野郎は…)
「おい、何とか言えよ」
「そうだなぁ…少し遅れるけど、行くことにする」
「そっか…じゃ、皆で学校近くの図書館で待ってるから」
そう言って信は電話を切った。
気を取り直して日本史に手をつける。
古典のときより時間はかかったものの、何とか終わらせることができた。
あとは数学と英語。こればかりはどうしようもない。
10時ごろになり、俺は数学と英語のプリントを鞄にしまって手に持ち、出かける準備をした。
(図書館の話はグッドタイミングだったぜ。後で信に礼を言っとかなきゃな)
戸締りを確認し、玄関の鍵を閉め、振り返って道に歩き出したときだった。
ドン!
「うわっ!ととと」
横から何かがぶつかってきた衝撃を受ける。倒れそうになったが何とか体勢を立て直した。
「あっ!ごめーん」
「か、かおる!?」
「えへへへ。来ちゃった」
かおるはぺろっと舌を出し、頭をかきながら笑っていた。
「どうしてここに?」
「智也がなかなか来ないから呼びに来たの」
「信からの電話で少し遅れるって言っといたはずだぞ?」
「え?稲穂君からは来るってしか聞いてないよ?」
「あの野郎〜」
俺は右手に握り拳を作りながら言った。
「まぁまぁ。とにかく行こうよ」
かおるが俺を宥めるように何かを軽く押すような仕草をしながら言った。
「…そうだな」
俺は怒りをこらえながら言った。
「右腕、どうしたの?」
「これか…後でみんなに話すよ」
・・・・・・。
駅に向かいながら色々話していた。その途中にある公園の木陰で、ガラの悪そうな連中が一人の女の子をナンパしているのを見つけた。女の子をよく見ると…
「あれ、みなもちゃんじゃない!?」
かおるは驚きながら立ち止まった。
「そうだな」
俺も歩を止めたが、かおるほど驚かなかった。
「どうする?」
「助けるに決まってるだろ」
「でも…」
「いいから。かおる、俺があいつらの気を引いてる間に、みなもちゃんを連れて駅まで逃げるんだ」
「う、わ、わかった…」
かおるは渋々ながらもOKした。
俺はそれを聞き、かおるに自分の鞄を渡してから公園に入り、端の方にいるチンピラに後ろからそっと歩み寄った。
チンピラが怖くて逃げたのか、周りには誰もいない。
(警察呼ぶぐらいしてやれよなぁ)
「いや!離して!」
みなもちゃんは捕まれた腕を振り解こうともがきながら拒否する。
しかし、相手が相手なだけにそれも無理みたいだ。
「だから言ってるだろう?俺たちと付き合ってくれたら離してやるってよぉ」
右端にいるチンピラが顔をみなもちゃんに近づける。
俺は「おい」と言ってチンピラの肩に左手でポンと触れて引っ張り…
「ん?」と俺のほうを見た瞬間、チンピラの顔面に右ストレートを思いっきり当てる。
バキ!
「ぐあ!」
チンピラは吹っ飛び、その横にいたチンピラの顔に顔面クラッシュし、その衝撃で顔面クラッシュを食らったチンピラが吹っ飛び、その横にいたチンピラの頭に顔面クラッシュした。
ドサ!ドサ!ドサ!
(トリプルKO…)
「あ!智也さん!」
「みなもちゃん!外にかおるがいるから一緒に駅まで逃げるんだ!」
「わかりました!智也さんも気をつけて!この人達ナイフ持ってます!」
みなもちゃんはそう言って手ぶらで外に走っていき、外にいたかおると二人で駅の方へ走っていった。
「何しやがんでぇ!くぉらぁ!」
最後に残ったチンピラがドスの入った口調で睨みながら聞いてくる。
(ん?…どこかで…?)
「そっちこそ朝っぱらから何やってんだよ!?」
俺もチンピラほどではないが、睨み返しながらドスを入れて問う。
「この野郎、俺様が流星学園のボスだってことを知っててやってんのかぁ!?」
(流星学園のボス?…あぁ、あの時の。顔に見覚えがあると思ったら…)
「ふ〜ん。去年の5月頃にボスの座を争ってボロ負けしたあのクズ野郎か」
「こいつ、なめやがって!あの時の三上みてぇに口の悪い奴だなぁ。くっそぉ、顔も似てるから余計に腹が立つ」
そう、去年の5月頃に目の前にいるチンピラを二度と立ち上がれなくなるぐらい叩きのめしたのは俺だ。
(あの時のこと、相当根に持ってるなぁ)
チンピラは怒りながら両手に握り拳を作ってパンチを飛ばしてくる。
だが、俺は全て回避した。
「くっ!」
「どうした。一発も当たらないじゃないか」
「この野郎!これでどうだ!?」
チンピラはポケットからナイフを取り出した。
「まだまだ」
俺はいつも喧嘩をするときの構えを取る。
「ん?そ、その構えは!?…お前…さっきの女の子が“ともや”とか言ってたが、まさか…!?」
「そうさ、あの時お前を打ち負かした、元流星学園の三上智也だ!」
「そうか、お前が…あの時の恨み、ここで晴らさせてもらうぜ。食らえ!」
チンピラはナイフを振り回してきた。
回避するのが遅れ、ナイフは俺の左腕をかすった。その時にできた傷からは出血している。
「はっはっは!これで最後だ!」
チンピラは突き刺さんとばかりに突進してくる。
俺は右足でソバットを繰り出し、
ブン!
かかとの部分をナイフに当ててチンピラの手から叩き飛ばし、
パッキーン!
叩き飛ばしたナイフが木にスカッっと刺さったのを見て呆気に取られているチンピラの腹に右手で思いっきりパンチを食らわせた。
ドゴォ!
「う、うぅ…ぐはっ!」
ドサ!
チンピラは腹を抑えながら崩れるように倒れた。
「悪事を働く奴は必ずこうなるんだ。覚えとけ!」
俺は近くに落ちていたみなもちゃんの鞄(というよりはバッグと言ってもいいぐらいでかい)を肩にかけ、公園から出て何もなかったように駅に向かって歩いていった。
すれ違う人たちが、傷口を抑えている右手の指の間から流れる血を見て「うわぁ」と言う声を出してたのは付け加えということにしておこう。(傷口は洗ったが、出血は止まってない)
「あ!智也(智也さん)!」
駅で俺の姿を見つけたかおるとみなもちゃんが駆け寄ってくる。
「待たせたな。みなもちゃん、忘れ物だよ」
俺は右肩にかけていた鞄を差し出しながら笑顔で応える。
「ありがとうございます。って、どうして私のだとわかったのですか?」
俺が差し出した鞄を受け取りながら聞いてくる。
俺はみなもちゃんの鞄についている名札を指差すと納得した。
「うぅわぁ。酷くやられたねぇ」
かおるが見たくないものを見てしまったといった感じの表情で言う。
ぐいっ!
みなもちゃんに突然左腕を引っ張られた。
「あ!みなもちゃん、何を!?」
「止血手当てです。来てください」
そう言って近くにあったベンチまで俺を引っ張り、無理やり座らせてその横に座り、鞄から少し大きめの箱を出し、中からティッシュなどを取り出して俺の左腕から出ている血を拭き、消毒などを始めた。
「みなもちゃん、まるで医者みたいだね」
かおるが感心しながら言う。
「父が医者ですから」
そう言いながらテキパキと処置をしていき、最後に包帯を巻く。
「はい!これで終わり!さっきは本当にありがとうございました」
取り出したものを箱にしまい、それを鞄にしまいながら言う。
「あんな状況を見せられて黙ってるほどお人好しじゃないんでね」
「智也って、喧嘩強いんだねぇ。びっくりしちゃったよ」
聞くところによると、こっそり見ていたみたいだ。だが、傷の原因を知らないということは、途中で駅に向かったのだろう。
「そっか…かおるもみなもちゃんも知らなかったんだっけ」
俺が手洗いで流れ出た血を洗い流した後、色々話しながら改札を抜けて電車に乗り、学校に一番近い駅で降りて改札を出る。
電車に乗ってる間、俺の両腕の包帯に視線を浴びたことを付け加えておこう。
学校近くの図書館へは小夜美さんと付き合ってた頃に何度も行った事があったので知ってた。
隣町にも図書館はあるのだが、こっちの方が大きいからと勉強を見てもらうときはいつもこの町の図書館に来ていた。
やがて図書館に着き、中に入って皆を探す。
「智也ぁ、こっちだ」
信が椅子に座りながら少し小さめの声で手を振りながら呼んだ。
「この野郎、少し遅れるって言っただろうが」
「わりぃ。音羽さんに言うの忘れてた」
「い〜な〜ほ〜く〜ん?どういうことかな〜?」
かおるが信に詰め寄りながら、しかも笑顔でありながらドスの入った口調で聞いていた。
信の頭には大量の冷や汗が吹き出ている。
(双海さんといい、かおるといい、よくあんな器用なことができるなぁ…女の子はみんなそうなのか?…もしそうだとしたら…ぞぉ〜(冷や汗))
その後、信がどうなったかは後ほど説明するとして、俺は空いていた席に腰を下ろし、鞄に入っていた数学と英語のプリントを取り出した。
「そう言えば、彩花は?」
周りには、信・唯笑・かおる・村野さん・みなもちゃん・双海さんがいたが、彩花の姿が見当たらなかった。俺はそれに気付いて問いかける。
「桧月さんなら本を探してるぜ」
「そうか…」
来ていることを知ってホッとする。
「やっほー♪智也。…って、左腕、どうしたの!?」
戻ってきた彩花が後ろから驚きながら聞いてくる。
「ああ、これか…さっき…」
俺はさっきまでの出来事を右腕の包帯の理由と一緒に皆に話した。
「遅れてよかったのかもしれないな」
信が突っ込むように言う。
「さすが智也さんね」
双海さんが笑顔で言う。
「うちのお父さんにも思いっきり反発するぐらいだもんねぇ」
唯笑が感心しながら言う。
「本当にありがとうございました」
みなもちゃんは顔を赤くして微笑みながら言った。
「正義感もあるのねぇ」
彩花は感心しながら言った。
周りをよそに俺は机に乗せたプリントを始めた。
・・・・・・。
「お父さんが海外に転勤しちゃってから、もうすぐ1年になるねぇ…」
何の前触れも無く唯笑が独り言のように言った。
「おっちゃん、海外に転勤したのか?」
「うん、去年の9月頃に智ちゃんが澄空学園に転校してくると同時に転勤になったの」
「ふ〜ん、どうりで転校してきてから何も言ってこないと思ったら…」
叔父は俺が引っ越してくる前まで色々と口うるさく言ってきた。俺はそれをすべて跳ね除けていたのだが…。
俺が喧嘩が強いことを知ってたのか、暴力を振るうことは無かった。
「やっぱり、そういうことなの?」
双海さんが突っ込むように唯笑に聞いた。
「ほぇ?やっぱりって、どういうことですか?」
唯笑が目を丸くして聞く。
「日本のサラリーマンは大変らしいわね?会社と結婚して、本当の妻の元へは帰れないとか…確か、参勤交代(江戸時代、諸国の大名が原則として1年おきに江戸へ出て、幕府に勤務した制度)だったかしら?」と真面目な顔をして聞いてくる。
ずるるるるるっ!
双海さん以外、みんな椅子からずり落ちた(俺もその中に入る)。
しかもそれを見た周りの人たちがなにやらボソボソと話している。
「あ、あのね…仕事の都合で海外に赴任になったってだけですよ」
俺はずり落ちた体を戻しながら言った。
「社長の、下知(指図すること)?」
ずるっ!
俺はまたずり落ちた。他の皆はそのままの体勢だった。
(どこでそんな言葉を覚えたんだぁ?)
俺達のリアクションを見てくすくすと笑う人たちも出てきた。
「わ、私が説明します」
村野さんが体を椅子に戻して言った。今までの経験からして説明が一番うまい彼女にさせるのがいいと思ってたので丁度よかった。
その間に他の皆も体を椅子に戻す。
説明にかかった時間は10分。
「ふ〜ん。帰国して2年になるけど、まだ日本はよくわからないわねぇ」
そう言って席を立ち、本を取りに行った。
皆あきれた表情だった。
「何だかなぁ、頭はいいんだろうけど、その知識は偏ってるとしか思えないなぁ」
信がボソボソと話し始めた。
「そうだなぁ。痴漢が何かも知らなかったぐらいだし」
「この間なんかプリクラを街頭写真なんて言うんだから」
かおるが突っ込むように言う。
(が、街頭写真…(汗))
「どうしてそんな古いものは知ってるのでしょうか?」
みなもちゃんが問う。
みんなわからないというジェスチャーをする。
ちんぷんかんぷんになりながらも気を取り直してプリントを始めた。
・・・・・・。
皆、教え教えられで何とか終わらせることが出来た。
丁度昼過ぎになったので図書館を後にし、デートのときなどに俺が朝飯を食べるために行っている駅の近くの喫茶店で食事をすることになった。
「稲穂君、忘れないでね♪」
「はぁ〜ぃ…」
元気なかおるとは反対に信は落ち込みながら返事をした。
俺が遅れることを言わなかった罰としてかおるの分は信が払うことになったのだ。
「その程度で済んで良かったじゃないか?」
周りの皆に聞こえないようにボソボソと信に話し掛けた。
「ホントにこの程度で済めば言うことはないぜ」
信も同じようにボソボソと話してきた。
「どういうことだ?」
「音羽さん、ヤセの大食いなんだ」
「この前の遊園地のときはそんなことなかったぜ?」
「あの時はな。昨日、唯笑ちゃんとデートしてるときに音羽さんにばったり会っちゃってさ。何か嫌なことがあったらしくて、やけ食いに付き合わされたんだ。その時に…」
信はそれ以上言わなかったが、ヤセの大食いと聞くと何となく想像できた。
俺は以前テレビでヤセの大食いをする人を見たことがあった。おそらく、それと同じかそれ以上…(冷や汗)
そして喫茶店に着き、かおるは誰もが想像を絶する食べっぷりを見せる。
大食いな上に早食いということもあり、周りには何十枚といった皿が何枚かづつに重ね置きされている。
そのうちの何枚かはメニューが運ばれてくるごとに店員が片付けていったが…。周りの視線が痛い。
かなり大げさに予想していたのだが、それをもはるかに上回る大食漢に何も言えなくなってしまった。
途中でかおるが手洗い行き、ボソボソと話し始める。
「凄い食欲ですね」
みなもちゃんがパフェを少しづつ食べながら言う。
「唯笑は何度も見てるけど、今日はいつもの倍だね」
唯笑は見慣れていると言う感じでサンドイッチを食べていたが、
「まぁだ食うのかよ〜」
信は完全に沈んでいた。食も細い…。
「大きな胃袋してるわねぇ」
彩花がスパゲティを食べ、感心しながら言う。
双海さんは驚きのあまりに何も言えない感じの表情になりながら紅茶を飲んでいた。
「でも凄いですねぇ。どうしてあんなに入るのでしょうか?」
村野さんがピザを手に持ち、感心しながら聞いてくる。
「食ってすぐに消化が始まるらしいんだ。胃袋の大きさも多少は関係してるかもしれないけどね」
俺はコーヒーを飲みながらテレビで知ったことをそのまま教えて続きを言う。
「これだけ食っても後で絶対に言うぜ」
「何を?」
双海さんが突っ込むように聞いてくる。
「実際に聞いたほうがいいと思う」
「お待たせ〜♪」
言い終わってしばらくしてかおるが笑顔で戻って来たので話は終わった。
かおるが食べ終わって信が払った被害額(?)については語るまい…。
かおるの食欲には店員も呆気に取られていたようだった。
店を出てしばらくすると、かおるは腹をさすりながら笑顔で言った。
「まだお腹すいてるのよねぇ♪」
ぐわっしゃぁ!!!!
周りにいた皆と一緒に俺もひっくりかえる。
わかっていたのだが、実際に聞くと…。
俺達のリアクションを見て笑う人があちこちにいた。
その後、俺達は駅で別れて帰っていった。
(そういえば、信に礼を言うのを忘れてた…ま、いいか…)
<あとがき>
今回はキャラの登場は均等(?)に保ちました。うけ狙いもその中の一つですが…。
かおるやみなもちゃんにも何か目立つ部分を入れようと思ってこういう設定にしました。
みなもちゃんが襲われてた公園ですが、分かるとは思いますが、遊園地の近くにある公園とは違います。
「何でこうなの?」と首を傾げる人が出てくるかもしれませんが、それでも読んでいただけたら幸いです。
短文ですが以上です。