第5話
「新しい日常」
かおりさんとかおるの実家で会った日から数日後、俺とかおるは彼氏彼女という関係になっていた。
ある日、突然のかおるからの告白に俺がOKしたからこうなったのだ。
「私と付き合う気、ある?」
本当に突然の告白だったが、
「ああ」
俺は笑顔で首を縦に振りながら言った。
この事実はあっという間に学校中に広がり、俺はかおるファンの男子生徒や幼馴染みの二人に嫉妬交じりの殺気を浴びた。
だが、俺はそんなことが気にならないぐらいかおるのことを好きになっている自分がいることに驚かずにいられなかった。
かおるに再会するまでの間、彩花と唯笑は俺を遊園地などに連れて行ったりしたが、特に何も感じなかった理由も今になってようやくわかったような気がした。
彩花と唯笑は最初の頃こそ講義を叩きつけてきたが、かおるがうまくはぐらかしてくれたおかげで今は何も言わなくなった。
「おい智也、桧月さんと今坂さんのこと、どうするつもりだ?」
信がマジな表情で聞いてきた。
「どうするって言われても、かおると付き合ってるのに二股三股かけるわけにはいかないだろ?」
「そりゃぁ、そうだな」
意外とあっさり納得した。
「だろ?それに幼馴染みだから付き合わなきゃいけないなんて決まりはどこにもないし、それにそんなに気になるならお前が付き合えばいいんじゃないか?」
これを聞いて信はポンと手を叩いてどこかへ行った。
入れ替わるようにかおるが戻ってくる。
「稲穂君、本気で実行するのかな?」
「あいつのことだから確実に行動に移すだろな」
そんなことを話しながら二人で笑っていた。
その後、信の計画はあっさりと粉砕されたとか…。
でもそんなことは信には悪いが、俺にとってはどうでもよかった。
彩花と唯笑はそれぞれ彼氏を作ったと風の噂で聞いた。
信は小夜美さんと付き合いだしたとか…。
だが、噂では試作パンやプロレス技の実験材料にされてるとか…。
しばらくして、かおるはこれ以上俺に迷惑をかけるわけにはいかないと言って一人暮らしを始めた。
場所はかおりさんが住んでいたところにしようとしたそうだが、そこにはすでに住んでいる人がいた。
そのため、少し離れたアパートを借りてそこに下宿することになったのである。
俺は引き止めたかったが、「休日とかに遊びに来てくれればいいじゃない♪」と笑って納得させた。
ある朝、もう少し寝ていたいと思いながら学校に向けて歩く。
その途中で一人の見慣れた女子生徒に会う。
「一人で寂しくない?」
と俺の姿を見つけて語りかけてくるかおる。
「孤独が似合う男と呼んで欲しいものだな」
と俺は渋く決めるが、
「じゃ、孤独が似合う男さん?学校までご一緒しない?」
とからかうように笑いながら尋ねてくる。
変に格好つけないほうが身のためだなと思わされた瞬間だった。
「ま、断る理由もないし、いいか」
「じゃあご一緒しちゃおっと♪」
少し呆れ気味になっている俺の横に並んで歩く。
「そう言えば、今日って国語の課題があったよね?」
「そんなものあったっけ?」
突然かおるに聞かれるが、俺は本当に知らないので質問にして返した。
「もしかして、忘れてたとか?」
「あぁ、バッチリ忘れてた」
と正直に答えると、かおるは一瞬呆れたような表情になり、その後笑顔で言った。
「アハハ。智也ったらそういうところは相変わらずだね」
「ははは…」
ずっと持っていたものと引き換えに手に入れたのはほんのささいなもの。
だけど、かおるとこうしている日々が、俺の新しい日常なのだ。
そう…“新しい日常”だ。
かおるとの再会。かおりさんとの約束。
そして、付き合いだした俺達。
オカリナの音色と、「自分の気持ち」と言って最近もらった、一枚の鳥の羽に込められた、かおるの俺に対する想い。
音だけでなく、羽にもかおるは想いを込めていたこと、そしてその深さを思い知った。
きっかけは何だったのだろう?おそらく中学のときに俺が転校したことだろう。
そうしなければ、俺は10月頃にかおるに会っても特に何も感じなかったのだから。
中学の時に転校という形で俺とかおるを引き合わせてくれた両親には感謝すべきだろう。
そして、俺にかおるのことを任せてくれたかおりさんにも…。
〜FIN〜
<あとがき>
またかなり間が空きました。
最後の方に少し洒落みたいなものを入れてみました。
オリジナル小説を手がけていたのでこっちはすっぽかし状態でして…。
もうすっかり忘れてられてるでしょうね…。
それでも覚えててくれた方には感謝です。
“音”と“羽”にこめられた“かおる”の想いという感じで少ししゃれを聞かせたのは余談です。
「未来へ一歩づつ」と同様に最初から最後まで短文でしたが、以上です。