第1話

『運命(デスティニー)』

俺は、毎日同じ夢を見る。
・・・いつも同じ『女の子』の夢だ。
物心ついたときから毎日彼女の夢を見る。

彼女は俺にとって、まさに『運命の女の子』なのだ。
何故、『運命』なのか・・・。
それは、俺が成長するたびに彼女同じように成長したからだ。
友達に言わせれば、『創造力豊かな夢』らしいが、俺にとっては『予感』めいたものがあった。

・・・そして、俺が生まれて18年目になるこの日、その『予感』は見事に当たることとなる。

俺の名は、トオル。
某高校の3年生。


〜学校から自宅へ〜


せっかくの誕生日だというのに、いつものように学校に行き、つまらない授業を子守唄代わりに聞いて終えた俺は、家路へと急いでいた。
いつもと同じなだけだったのは『起きて』からだけだったからだ・・・。
こんなこと一度もなかったのに・・・、今日と言う日になぜか『彼女』・・・つまり、運命の女の子の夢が見られなかったのである。

トオル:「・・・はあ〜っ。」
大きめのため息を一つ。
俺は気が重くなるのを振り払うように自宅の玄関の鍵を開けて家に入る。

トオル:「・・・ただいま〜。」
誰も居ない居間に向かって言うトオル。
これも、いつもの日課の様なものだった。

自分の部屋のドアを開けると、かばんをうっちゃって、ベッドに横になるトオル。
そのままゆっくりと目を閉じた。
 ・
 ・
 ・
???:(・・・起きて。)
声が聞こえる。
優しく、そして澄んだ声。
まだ、意識は眠りの底にいながらも、その声に反応するトオル。

???:(・・・ねぇ、目を覚まして?)
今度は肩を揺すりながら、声をかけてくる。
段々と覚醒し始める意識の中、トオルは心地よい感じを嬉しく思った。

???:(・・・あなたは、私の『運命の男の子』なんでしょ?)
その言葉を聞いた瞬間、『ガバッ!』っとトオルは跳ね起きた。

トオル:「・・『運命の女の子』・・・。」
夢か・・・。と、頭を振りながら心の中で深いため息を吐くトオル。
しかし、やけに生々しい夢だったことは確かだった。
トオルはベッドから降りようと視線を横に向けた。

???:「・・やっと起きたみたいね。この・・・ね・ぼ・す・け・くん。」
トオル:「・・えっ!?」
トオルは、目の前に何が起きたのか考えることもできず、呆然と『彼女』を見た。
それは、まぎれもなく毎日見てきた『運命の女の子』だった。
トオルは、右手を頬に近づけるとおもむろに≪グイッ≫ッと引っ張る。

トオル:「イテテテテ・・・・・。」
どうやら『夢』じゃないことだけは確かだった。

???:「・・・?何しているの?」
トオル:「・・いや、『夢』じゃないのかと思って・・・。」
???:「やだな〜。『夢』なんかなわけないじゃない。」
そうは言うが、『夢の中の女の子』が、現実に存在することの方がすぐには信じられない。
それは、いたって普通な反応だろう・・・。

???:「・・それで、君の名前はなんていうのかな?」
トオル:「・・えっ?・・『トオル』だけど・・・。」
???:「トオル・・か。私は、ノエル。よろしくね♪」
ノエルと名乗る『彼女』は、屈託のない笑みを浮かべる。
その瞬間、トオルは胸に弾丸を打ち込まれたような感じを覚える。

トオル:(・・・現実はこんなに可愛いのか・・・。やっぱり、俺は彼女が『好き』だ。)
18年間・・・物心ついた時から感じていた自分の中の『感情』。
『好き』という気持ちは、現実の彼女を見ることでさらに大きなものになった。

ノエル:「・・じゃあ、トオル。一緒に行こうよ♪」
そう言って手を差し伸べるノエル。
・・しかし、トオルはとっさに手を出すも、何がなんなのか解らない。

トオル:「・・えっと、どこにいくのかな?」
とりあえず聞いてみる。
ノエルは、ニコリともせず答えた。

ノエル:「・・・『時の世界』へよ。」
・・・・と。
―――――その瞬間、トオルの視界は真っ暗になり、足元の床が消えて落ちていったのである。


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〜時の世界〜


・・・暗闇の中にいた。

さな光が無数に輝きを放っている。
まるで、真夜中の星を見ているかの光景。
だが、足元はおぼつかず宙に浮いている状態だ。

トオル:「・・・ここは?」
トオルはそんなあたり前な言葉を吐く。

ノエル:「・・・ここが、『時の世界』よ。」
ノエルもあたり前のように答える。

振り向きもせず、トオルに背を向けたままノエルは喋りだす。
ノエル:「・・・さあ、探しに行くわよトオル。・・・『ときあい』をね♪」
トオル:「・・『ときあい』?」
聞きなれない言葉に反応するトオル。
見た目は冷静に見えるが、トオルはかなり混乱していた。

物心ついたときから毎日見る『夢』
『運命の女の子』の出現。
『時の世界』
『ときあい』
どれも『キーワード』のようだが、説明不足のせいかどれも『ピン』とこない。
ただ言えるのは、自分がこの『お話し』において、重要な位置にいると言うことだった。
・・つまり、この『物語』では主人公なのだということ。

トオル:(・・・まあ、毎日彼女の夢を見ている時点で、『普通』じゃないとは思っていたけど・・・。)
そんなことを考えてしまうトオル。
しばらくすると、彼女はゆっくりと振り向いた。

ノエル:「・・・・・君は、私の『運命の男の子』なんでしょ?」
トオルの問いには答えず、ノエルはトオルに問いだす。
その瞳は、とても寂しそうな感じがした。

トオル:「・・確かに、俺は君を『夢』で毎日見てきたけど・・・。」
ノエル:「・・私も見ていたわ・・・君のことを・・・。」
トオル:「・・でも、『そのこと』とこの『世界』はイコール(=)じゃないんだ。」
ノエル:「・・・はあ〜、面倒臭いわね。・・説明しないとダメ?」
ワザとらしくため息をつくノエルに、トオルは『こういう性格』なのかと少し落ち込んだ。
『夢』で見た彼女は、可愛く笑い優しそうに感じた(あくまで想像だが)のだが・・・。
実際は、とても『大雑把な性格』で『行動的』なのだ。

トオル:(・・まあ、単なる俺の想像だったんだけどな・・。)
そうは思っても、この『ギャップ』はトオルとしても完全に納得できるものじゃなかったが・・・。
だが、『好き』という感情は収まる気配は無かった。

ノエル:「・・・ここはさっきも言ったけど、『時の世界』なの。」
トオル:「・・・その、『時の世界』って言うのは何ナノ?」
ノエル:「・・・・・そこから説明しないといけないのか・・・。」
トオル:「・・・ごめん。」
彼女の雰囲気から、謝ってしまうトオル。
別にトオルが悪いわけじゃないのだが・・・。

ノエル:「・・・ハッキリ言えば、君の世界とは『別世界』なのよ。・・『別次元』と言ってもいいわね。」
トオル:「はあ・・・。」
それくらいのことは解っているつもりなのが、口にはしない。
トオルは、ノエルの言葉を待った。

ノエル:「この世界の名の由来は、『時の神・クロックウェル』から来ているのよ。」
トオル:「・・『ときのかみ・くろっくうぇる』?」
ノエル:「・・君の世界にも、『神様』が存在していたという伝承があるでしょ?」
トオル:「・・・本当かどうか走らないけど・・・確かにそういう言い伝えはある。」
ノエル:「・・ただし、ここでは『本当に存在する』んだけどね。」
トオル:「・・・はあ。」
解ったのか解らないのか、適当な相槌を打つトオル。
ノエルは、『そのうち会えるかもよ。』と付け足した。

ノエル:「・・でね、『ときあい』って言うのはこの世界に伝わる『伝説』なのよ。」
トオル:「・・伝説?」
ノエル:「・・それを探し当てた者に『この上ない幸せ』をもたらすと言う『モノ』なの。」
トオル:「・・・へ〜。」
ノエル:「・・・信じてないでしょ、君?」
・・確かに、『はい、そうですか。』と簡単に納得が行くわけもない。
大体そう言ったものは、『いわく付き』なものが多いのはトオルでなくても知っている。
大抵『大した宝物』じゃなく、そこに行きつくまでの『苦労』が『物凄い宝物』に感じさせてしまうのだ。

ノエル:「・・なんたって、『神様』が探しているほどのものなんだから・・・。」
トオル:「・・えっ?嘘。・・マジで?」
そんな言葉があたり前のように出てしまう。
しかし、なんで『神様』が『この上ない幸せ』を求めるのか?
余計に解らなくなるトオルだった。

トオル:「・・でも、なんでそれを『ノエル』が知っているの?」
ノエル:「・・・まあ、色々あるのよ。」
とても自然にノエルの名前を口にするトオル。
ノエルは顔色一つ変えず、トオルの問いに『曖昧』に答えた。

トオル:「・・ノエルはここに住んでいるの?」
ノエル:「・・そんなわけないでしょ。私はトオルと同じ世界に住んでいるわよ。」
トオル:「・・じゃあ、なんでこの世界のことそんなに詳しく知っているの?・・それに、ノエルのその『力(能力)』は?」
ノエル:「・・・う〜ん。なんでだろう?・・・。物心ついたときには『行き来』できるようになってたし・・・。」
『曖昧』過ぎる彼女の『答え』に、トオルは『不安』を感じていた。

トオル:「・・じゃあ、なんで俺のことを・・。」
ノエル:「・・毎日見てたからかな?『君』なら一緒に手伝ってくれるって。・・だから、一生懸命探したのよ。」
トオル:「・・・・・それだけ?」
ノエル:「うん♪絶対、君と一緒に探さないといけない感じがしたのよ。」
トオル:「・・・そんな・・・だいたい、『ときあい』探してどんな『この上ない幸せ』をてにしたいんだよ。」
ノエル:「・・・やっぱ、まず『ステキな彼氏』をゲットすることだよね♪」
トオル:「・・・・・・・・・・・・・・・・」
トオルはノエルの言葉にあんぐりと口を開けたまま何も言えなかった。
トオルにとっては、『運命の女の子』=『運命の彼女』なのだが・・・。
ノエルにとっては、『運命の男の子』=『相棒』なのだ。
これは、あまりにも『厳しい現実』だった。

ノエル:「・・ねえ〜・・・ダメ?」
可愛らしく『おねだり』のポーズを取るノエル。

トオルは嬉しいのか哀しいのか解らない『微妙な笑み』を浮かべて言った。
トオル:「・・・わっかた。手伝うよ。」
・・・と。


★★★あとがき☆よこく★★★
どうも、なおふみんです^^
チャットではかなりお世話になっています^^(ペコリ
さて、始まりました。
なおふみん式『トラベル☆ラブストーリー(時超恋愛)』とでもいいましょうか・・・。
このお話しは5話で終ります。(・・・本当に?)
とは言っても、第一部なんですけど・・・。
あ、今から』ネタバレ』はまずいかな〜。
って言うか、ネタバレてどうとなるような物語じゃないけど・・・(汗
一応、二人の『恋』が始まるまでのお話が『第一部』となります。
その後は、読者の応援次第^^
・・・それと、h−yama氏がどう思うかで決まります。
じゃあ、予告行きますね♪
次回は、『ときあい』探しに出ます。
・・・しかし、それがどんなものなのか・・・。
あと、登場人物で紹介している残りのキャラも出ますのでお楽しみに^^
では^^/

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