第2話

『絆』

旅立ちと言うものはいつも『突然』だったりする。
それが、自分の許容をはるかに越えた出来事であるなら、『混乱』することも確かだろう・・・。
しかし、結局のところ事態が変わるわけも無いので、あるがままに受け入れてみる。
『好転』というには、ある意味『ネガティブ』な思考なわけだが、裏を返せばなんてことはない『開き直り』というヤツだ。

『運命』と信じて疑わなかった『彼女』との出会いは、俺の心にともる『光』なわけだったが・・・彼女はそうでもなかったようだ。
彼女にとって『俺』は、夢を叶える為に必要な『運命の人』なわけだ。

トオル:「トホホ・・・。」
と口にしてみる。
情けないことこの上ない。

ノエル:「・・さっきから、どうしたの?」
そんな風に声をかけてくれる。
だが、それも『パートナー』としてなのだと思い出しては、『トホホ・・・。』となる俺だった。


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〜時の神の間〜

ノエル:「・・さ〜てと、どこから探そうか?」
と聞いてくるノエル。
しかし、この世界に来たのはこれが初めてのトオルに気の利いたセリフなど出てくるわけもない。

トオル:「・・どこって言われても・・・俺、この世界に来たの初めてだし・・・。」
・・・と、やっぱりである。

ノエル:「・・・そうだよね〜。・・よし、ここは『情報収集』に行きましょう^^」
悪戯っぽい笑みを浮かべて言うノエル。
トオルは頷くことくらいしかできない。

ノエル:「じゃあ、行くよ。」
そう言うと、トオルの手を取りノエルは上とも下ともつかない空間の中を歩き出した。

時間の流れさえ解らない場所をどれほど歩いただろう・・・。
トオルは、黙ってノエルと共に歩いていたが、行き先が目の前に広がる光に向かっていると解ると、自然と言葉が口から出る。

トオル:「・・・あそこに向かっているの?」
ノエル:「・・そう。ま、本来なら『寄り付きたくもない場所』なんだけどね。」
トオル:「???」
ノエル:「・・なんていうか・・・会いたくないヤツに会わなくちゃいけないもんだからさ・・・。」
トオル:「・・誰かに会いに行くつもりだったの?」
ノエル:「そ。・・・す―――っごく嫌なヤツにね。」
そんな会話をしているうちに、光が満ちた場所へと到達する二人。

???:「・・・久しぶりだね、ノエル君。」
光の中に入ろうとした瞬間、その中から現れる人影があった。

ノエル:「・・できる事なら、一生会いたくなかったわね。」
???:「・・ハハ、相変らず、照れ屋なようだね君は。」
ノエル:「そー言う、勘違いをするから嫌いだって言ってるのよ、クロックウェル。」
ノエルに邪険にされていると言うのに、マイペースに自分の間合いで話す男。
この男こそが、時の神と言われているクロックウェルその人であった。

クロックウェル:「・・・まあ、冗談はさておき、また『ときあい』のことですか?」
と、トオルを今だ無視したクロックウェルの言葉。
トオルは二人の空間に疎外感を感じていた。

ノエル:「・・そ。何か、いい情報ない?」
クロックウェル:「・・相変らず、遠慮と言うものが無いお人ですね〜。」
苦笑しながら言うクロックウェル。

ノエル:「いいから、どうなの?」
クロックウェル:「・・そうですね、『敵』に塩を贈るのは嫌なんですが・・いいでしょう。・・『時の獣・クロケット』を探すのが『ときあい』への近道のようですよ。」
ノエル:「クロケット?」
クロックウェル:「・・ええ。ただし、どこにいるのかは私も解らないんですがね。」
ノエル:「・・本当に?」
クロックウェル:「・・本当ですよ。大体、もし嘘でしたらとっくに『ときあい』は私のモノになっているはずでしょう?」
ノエル:「・・それもそうね。」
クロックウェルの言葉に、妙に納得するノエルだった。

ノエル:「・・で、そのクロケットの特徴は?」
クロックウェル:「・・それはですね・・・どうやら、『蛙』の様な姿をしているらしいんです。」
ノエル:「・・・か、蛙〜。」
クロックウェル:「・・・ええ。しかも、クロケットには別世界の空間を作る力があるとか・・・。」
ノエル:「・・ちょ、ちょっと、何で『蛙』ごときにそんな大層な力があるのよ。」
クロックウェル:「・・だから、ですよ。そんな力を持った蛙だからこそ、『ときあい』のことを知っているんじゃないかと言うことなのです。」
ノエル:「・・そう言われるとそんな気も・・・。」
嫌々ながらも、信じることにするノエル。

ノエル:「・・ま、それだけ情報がもらえれば、こんなトコロに用は無いわ。・・行くわよ、トオル。」
いきなり声をかけられ、返事が出来ないとおる。

ノエル:「・・トオル?」
トオル:「・・あ、ああ。わかった。」
何が解ったのか?トオルはそんな曖昧な返事をした。

ノエル:「んじゃ、クロケット探しに行くよ〜♪」
といいながら、歩き出すノエル。
トオルは、諦めた様に、深いため息をついて歩き出す。

クロックウェル:「・・ノエルを頼みますよ、『運命の男の子』クン。」
トオル:「!!!・・なんで、『それ』を・・・。」
驚きに、顔を強張らせるトオル。

クロックウェル:「・・いつも、彼女が言ってましたからね。『運命の男の子』が自分を『ときあい』の下へ連れてってくれる・・・とね。」
トオル:「・・ノエルがそんなことを・・・。」
クロックウェル:「・・ええ。彼女は自分でも気づいていませんが、君のことをとても『待っていた』んですよ。・・もっとも、待ち続けていたせいで、『理由』と『目的』が掏り替わったみたいですがね・・・。」
トオル:「・・俺を待っていた。・・・あ、あの、なんでアンタがそれを俺に・・・。」
クロックウェル:「何故、私が君に塩を贈るような真似をするのかですか?」
クロックウェルの言葉に、コクンと頷くトオル。

クロックウェル:「・・それは、君と彼女が『運命の絆に導かれた者同士』だからですよ。」
トオル:「・・そんな理由で?」
クロックウェル:「・・『そんな』ではないですよ。今はまだ解らないと思いますが、『運命の絆』とは君が思っているよりもとても『大切』で『素敵』なものなんですよ?・・もっと、自分に自信を持ちなさい。・・それが、『ときあい』へと続く道なのですから。」
ニコリと微笑むクロックウェル。
トオルは、クロックウェルの言葉に真意がどこにあるのか良く解らない。
クロックウェル自身も『ときあい』を探し、またノエルに気があるように見えるのに、何故トオルたちに協力するようなことをするのだろうか?

クロックウェル:「・・難しく考える必要はないですよ。・・嫌でも、そのうち解る事ですから・・・。」
トオル:「・・あ!」
クロックウェルの笑みが、一瞬ノエルの悪戯っぽい笑みとダブル。

ノエル:「・・トオル?何しているの?行くよ。」
立ち尽くしたトオルに声をかけるノエル。
トオルは、ノエルの言葉に絆される様に歩き出す。
・・・納得はいかなかったが・・・。

クロックウェル:「・・・トオルくん。・・・頑張りなさい。」
意味深な言葉だったが、今は彼女と共に行くことをトオル結論づけるのだった。

ノエル:「・・何していたの?」
ノエルの自然な問いに、トオルは答えた。

トオル:「行こう!ノエル。・・『クロケット』を探しに行こう♪」
ノエル:「そうだね♪・・行こう!!」
答えにならなかったが、ノエルには十分なものだったらしい。


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〜別空間〜


クロケット:「ケ〜ロケ
ロケロ・・・なんか、面白いことが起こる『予感』がするケロ〜^^」
緑色肌に金色の星のマークが背中一面に付いた蛙が喋っている。
と言っても、どうみても『蛙のヌイグルミ』にしか見えない。

クロケット:「・・『運命の男の子』に『運命の女の子』・・・。『運命の絆で結ばれし選ばれたる者』・・・ケ〜ロケロケロ〜。」
意味深な言葉と共に、可愛らしい笑い声がこだましていた。


★★★あとがき☆よこく★★★
どうも、なおふみんです^^
なおふみん式『トラベル☆ラブストーリー(時超恋愛)』の第二回です^^
時の神・クロックウェルと時の獣・クロケットの登場です♪
どうやら、クロックウェルとクロケットは二人のことをなにやら知っている様子。
『運命の絆で結ばれし選ばれたる者』とは何を意味するのか?
そして、『ときあい』とは?
それでは、予告に行きましょう♪^^
次回は、時の獣・クロケットと出会います。
しかし、二人は離れ離れになることに・・・。
『運命の絆』の持つ意味が、少しずつ暴かれる次回をお待ち下さい^^
お楽しみに^^
では^^/

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