第3話

『離』

時間と言う概念がない世界・・・それが、この『時の世界』だ。
とは言え、どのくらい彷徨ったのだろうか・・・。
疲れも感じないのが、余計に『時間』という感覚を麻痺させていた。

トオル:「・・・どこにいるのかな?クロケットは・・・。」
ノエル:「・・・う〜ん。この空間から一つ一つ確かめるには時間がかかるし・・・。」
トオル:「・・かと言って、闇雲に探すのは得策じゃないよね。」
ノエル:「・・・そうなのよね〜。」
そこまで言って黙り込むノエル。
表情が少し険しくなる。

トオル:(・・・そういえば、クロックウェルが言ってた『あの言葉』・・・もし、『あの言葉』が本当なら・・・。)
どうやらトオルは、何か思いついたみたいだった。

トオル:「・・ねえ、ノエル。」
ノエル:「・・・・・なに?」
トオル:「クロックウェルが言ってた言葉・・・覚えているかな?」
ノエル:「・・・・・・う〜ん、何か手掛かりになるようなこと言ってたかな〜。」
トオル:「ほら、クロケットは別世界の空間を作ることが出来るってやつ。」
ノエル:「・・・そういえば、そんなことも言ってたような・・・。」
トオル:「あの言葉が本当なら・・・もしかしたら、クロケットは『新しい空間』の中にいると考えられるんじゃないかな?」
そこまでトオルが言うと、ノエルは相づちをうって頷いた。

ノエル:「・・そっか、時の世界の中で『新しく出来た空間』を見つけ出せばいいのね。」
トオル:「・・むやみに探すよりは、可能性があると思うんだ。」
ノエル:「・・そうね。となると・・・。『上』に行くわよ。」
トオル:「・・『上』?」
いきなり『上』と言われ、トオルは聞き返した。

ノエル:「・・この時の世界では、新しく出来た『世界』ほど、『上』にあるのよ。」
ニコリと微笑み説明するノエルは、言うが早いかそのまま跳躍するように『上』へジャンプした。

トオル:「うわっ!・・ちょ、ちょっと待ってよ〜。」
ノエルの行動に、慌てて後を追うトオルだった。


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〜最上界〜

時の世界の一番最上へとやってきた二人。
そこで、ひときわ輝く『光』を見つける。

ノエル:「・・あれだわ。」
トオル:「・・でも、本当にいるのかな?」
当然と言った疑問を口にするトオル。

ノエル:「トオルの言ったこと、きっと当たっているわ。クロケットはここにいる。」
自信に満ちた笑みを浮かべながら、ノエルは言った。

トオル:「ここで話してても何も解らないし、入ってみようよ。」
ノエル:「・・・そうね。・・でも、気をつけて。クロケットがどういうヤツなのか解ってないんだからね。」
そう言うと、ノエルは光の中へと歩んでいく。
トオルは慌てて彼女の後に続いた。

光の中は、『何も無い』空間だった。
・・そう、無重力の空間がどこまで続く何もない場所。
しかし、暗闇の中でなく、青空の中に『浮いている』といった状態だった。

トオル:「・・ここは?」
ノエル:「・・やっぱり、クロケットはここにいるみたいね。」
不思議な空間の中にいる二人は、それぞれ言葉をこぼす。
ノエルは、ある意味『確信』しているような発言だった。

トオル:「・・・何か、解ったの?」
ノエル:「・・・前にも言ったと思うけど、時の世界に無数に散らばる『光』の中には『別世界』が広がっているの。」
そう語り始めたノエル。
トオルは固唾を呑んでノエルの話に耳を傾けた。

ノエル:「・・『別世界』は、私たちが『常識』と感じる世界が『時間軸』や『場所』を越えて存在する世界なの。」
トオル:「・・つまり、現在・過去・未来のほかに、色々な町や都市や山だったりということ?」
ノエル:「・・まあ、そんな感じね。・・だけど、、この世界は違う。・・だって、私たち『空』に『浮かんでいる』のよ。・・ありえないことでしょ?私たちの『常識』では。・・・だから、この世界はそういう『常識』に囚われない者が作った世界だって解ったのよ。」
自身に満ちたノエルの言葉に、トオルはただ頷いていた。

ノエル:「・・・しかも、この世界はまだ『安定』してないみたいだし・・・。きっと、ここに『クロケット』はいるわ。」
トオル:「・・どういうこと?」
ノエル:「・・・だって、私たちが『空』に浮かぶことは『物理的』に"無理"があるでしょ?なのに、何の補助も無くこうしていられるのは、この世界が出来たてで、重力とかのあたり前な構造が出来ていないということを意味しているわけなの。」
トオル:「・・なるほど。だから、クロケットはここにいる・・と。」
ノエルは徹の言葉に満足そうに頷いた。

クロケット:「ケ〜ロケロケロ・・・。流石は、『運命の絆に結ばれし選ばれたる者たち』だけのことはあるケロ。」
と、目の前に現れたのは、緑の下地に金色の☆マークが付いた蛙のヌイグルミにしか見えない『生き物』だった。

ノエル:「・・あなたが、『時の獣・クロケット』ね。」
クロケットを指差し、ノエルが自信満々に言い放つ。
トオルは、そのあまりにも『獣』からかけ離れた『生き物』に落胆していた。

クロケット:「そうだケロ。いかにも、クロケットだケロよ。」
トオル:「・・・蛙のヌイグルミが喋ってる・・・。」
ノエル:「・・・まあ、そういうとこは突っ込まないで・・・考えると頭が痛くなるから・・・。」
頭を抑えながら、トオルの言葉に答えるノエル。
クロケットは何が面白いのか(?)、ずっと『ケロケロ〜・・・』と笑っている。

ノエル:「・・・で、あなたは『ときあい』がどこにあるのか知っているの?」
クロケット:「・・知ってるケロよ。・・ケロ、今はまだ教えられないケロよ・・・。」
ノエルの問いに、どこかコ馬鹿にしたように答えるクロケット。

ノエル:「何でよ〜。いいじゃない、ケチ。」
トオル:「・・いや、ノエル・・ケチとかそういう問題じゃないような・・・。」
ノエル:「・・なんでよ?」
クロケット:「・・・そうなのケロ?・・・お前たち・・・『まだ』・・・全く、しょうがないケロ〜。」
トオルとノエルのやり取りに何を感じたのか、苦笑するクロケット。
そして、何か『答え』を見つけたように頷く。

クロケット:「・・・少しばかり、『荒療治』ケロ〜。」
そう言うと、クロケットの身体は緑色のオーラが溢れ出す。

その瞬間、緑色のオーラは、球体となってトオルとノエルを包み込んでいく。

トオル:「なっ!何だっ!?」
ノエル:「・・ちょ、ちょっと、何したのよ、クロケット。」
緑の球体が二人を完全に包み込み、クロケットは、二人の目線にまで浮き上がる。

クロケット:「・・・『ときあい』が欲しいケロよ?・・ケロ、行くケロよ。そして、『運命の絆』を見つけるケロ〜。」
手を振って言うクロケット。

トオル:「・・・『運命の絆』ってなんだよ!?・・・そんなことより、ここより出せーッ!!」
ノエル:「コラーッ!この蛙モドキ〜っ、ここから出せーッ!!」
二人それぞれにクロケットに文句を言う。

クロケット:「ケ〜ロケロケロ。それじゃあ、また会おうケロ。」
クロケットがそういった瞬間、トオルとノエルは緑の球体と共に文字通り『消えた』のである。


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〜砂漠の世界〜


トオル:「・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ。」
どこまでも続く砂漠。
そこにトオルはいた。
太陽が照り付けるその場所に、いつまでもい続けることもできず、とりあえず歩き出したのであった。

トオル:「・・一体・・・こ・・ここは、どこ・・なんだ?」
汗を全身からダラダラと掻き、独り言のように言葉を発するトオル。

トオル:「・・・ノエル。・・無事・・・かな・・。」
喋るのもやっとと言ったトオル。
辺りを見渡す余裕も無いはずのトオルだったが、それでもゆっくりとあたりに体ごと傾けて人影が無いか確認していた。

―――そのころ、ノエルは。

ノエル:「・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ、・・ハアッ。」
トオルと同じように砂漠をひたすら歩くノエルがいた。
その瞳は生気を失いかけ、いつその場に倒れてもおかしくないほど"フラフラ"していた。

ノエル:「・・・ト・・オル。」
名前を呼ぶのが精一杯のノエル。
朦朧とする意識の中で、トオルだけを探していた。

クロケット:「ケロケロ・・・。大変そうケロ。・・もとの場所に戻りたいケロ?」
目の前に現れたのは、クロケットだった。
ノエルの瞳がどんどん生気を取り戻していく。

ノエル:「クロ・・ケット。・・・戻れるの?」
クロケット:「ケロケロ〜。戻れるケロよ、その代わり二度とトオルには会えないケロが?それでもいいケロか?」
笑いながらノエルの問いに答えるクロケット。
しかし、その言葉はあまりにも笑えない『答え』だった。

ノエル:「・・トオルに・・会えな・・い。」
意識が遠くなるのを必死で抑えながら、ノエルはトオルのことを思い返していた。

―――そのころ、トオルの方では。

クロケット:「ケロケロ・・・。大変そうケロ。・・もとの場所に戻りたいケロ?」
時を同じくして、ノエルのところにいるクロケットがトオルの目の前にいた。

トオル:「・・・俺は、ノエルを・・探す・・・よ。」
クロケット:「・・・いいケロか?このままだと、お前死ぬケロよ。」
トオルの言葉にクロケットは、慌てたように言う。
しかし、トオルは首を振る。

トオル:「・・・絶対、・・探し・・て・・みせ・・るよ。」
途切れ途切れになりながらも、必死に言葉を発するトオル。
その瞳は、決して"希望"を失ってはいなかった。

クロケット:「・・・解ったケロよ。絶対、ノエルを見つけるケロよ。」
そういうと、クロケットはまるで『幻』だったように消えていった。
消える瞬間、笑みをこぼしていったのだが、今のトオルにはそれを見ている余裕は無かった。

場所は変わって、ノエルは―――。

ノエル:「・・・私は・・・私・・・は・・・・・」
ノエルはクロケットの言葉に、揺れていた。

それは、意識が朦朧としているせいなのかもしれない。
今、ノエルは決断しようとしていた・・・。


★★★あとがき☆よこく★★★
どうも、なおふみんです^^
なおふみん式『トラベル☆ラブストーリー(時超恋愛)』の第三回です^^
クロケット探しの末、二人は離れ離れになってしまう。
『ときあい』を探すゆえで、『足りないもの』がある『二人』。
それが何なのかは、今はまだ語られることも無く・・・。
な〜んていった感じの今回☆☆☆
ストーリー展開も急展開をも変えます。
トオルはノエルに対する『答え』を出しました。
後は、ノエルにとっての"トオル"なわけで・・・^^
次回は、ノエルの答えが決め手となります。
まだ、『始まってもいない』二人の『旅』。
この先どこへ向かっていくのか・・・・。
ドレは次回へのお楽しみに^^
では^^/

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