第5話

『再会』

ノエルは、歩く。
そして、トオルも歩いていた。
どこまでも、果てしなく続く『砂漠』を・・・。

それは、自分たちの中にある『想い』さえも飲み込んでしまうほどぬかるんでいく様だった。

足を囚われては、また進む。
その繰り返しだった。
一体、どれ位歩いたのだろうか?
太陽の位置は変わることなく真上で二人を照らし続けていた。

二人の距離は、縮まっているのだろうか?
永遠とも思える時間の中で、こんなにも『相手』のことを意識したことがあったのだろうか・・・。

『好き』という気持ち・・・・・。
この単純なようで、とても複雑な『感情』。

時間さえも解らないままに歩き続ける二人。
実は、5時間以上も歩き続けていた。

そんな中、トオルは悩み始めていた。

トオル:(・・・俺は、ノエルが好きだ。・・でも、ノエルはきっと・・・・・。)
トオルは、ノエルがトオルを『好き』だと気づいたということを知らない。
自分の一方的な『好き』という想いだけで歩いていた。
そのことが逆に『不安』を生み出したのかもしれない。

トオル:(・・・このまま歩いたとしても、ノエルはいないかもしれない・・・。)
そう思うと、ドンドン歩くのが苦痛になってくるのをトオルは感じていた。

トオル:「・・・・・・・・・・・・・・・・」
とうとうその場に立ち尽くしてしまうトオル。
その顔は、これ以上にないくらい苦しみに歪んでいた。

トオル:(・・・そうさ、初めから分かっていたことじゃないか・・・彼女は、『ノエル』は俺のことなんか・・・)
思うと同時に、その場に崩れるように座り込むトオル。
そのまま膝を抱え、俯いたまま動かない。

クロケット:「・・・諦めるケロか?」
その声は突然、頭の上から聞こえてきた。
顔を上げるトオル。
しかし、その顔には生気が失せていた。

クロケット:「・・・・良いケロよ。この空間から出してやるケロ・・・。」
ニヤリと笑みを浮かべ、クロケットは手を前に出した。

トオル:(・・・これで、俺・・・・『ラク』になれるのか・・・。)
生も根も尽きたといった顔のトオル。
その時一つの『疑問』が頭を過ぎった。

トオル:「.・・クロケット。・・ノエル・・・ノエルは?」
クロケット:「・・・知る必要はないケロ。・・トオルは、もうノエルには一生会えないケロから・・・。」
トオル:「・・・一生・・・会えない・・・。・・・・ノエルに、もう会えない・・・・・。」
その瞬間、トオルの脳裏にノエルの顔が『フラッシュバック』した。

トオル:「・・・俺は、なんでノエルのこと・・・・・」
『好き』になったのだろう・・・。
そう、トオルは思い考えた。
『運命の女の子』と信じて疑わなかった。
だが、彼女は自分のことを『宝探しのパートナー』としてしか見ていなかった。
一緒に居ればもしかしたら『好き』になってくれるかもしれない。
そんな淡い期待を持っていたが、そんな暇もなくこうして離れ離れになってしまったのだ。
とっくに諦めてこの空間にいないかもしれない。
そういう『疑問』が浮かばないわけがない。
それでも、どこかに『もしかしたら・・・』という思いがここまでトオルを動かしてきた。

・・・・・だが、歩けども歩けども姿形も見えない。
やはり、とっくにこの空間から出てしまったと考えれば『ノエル』に会えない理由も頷けた。

・・でも、『何か』が引っかかっていた。
『もしかしたら・・・』
『それでも・・・』
『あるいは・・・』
―――そういった『想い』・・・・・いや、『願い』の様なものがトオルの中にあった。

トオル:「・・・・ハッ!!」
その時、トオルはクロケットの言葉を思い出した。
『諦めるケロか?』
あの言葉の意味することは何なんのか?

トオル:「・・・俺、信じてなかったんじゃないのか?・・心のどこかで『彼女はここにいるはずがない』って決め付けていたんじゃないか?・・・そんな気持ちで、俺はノエルを・・・・・。」
自分が許せなかった。
ノエルを『好き』だと思いながら、彼女を『信じる』ことさえしていなかった自分。
そんな自分が、本当に『ノエル』を『好き』だと胸を張って言えるのか!?・・・・・と。
不甲斐ない自分に、心底嫌気がさしたトオル。
そのまま立ち上がると、先程のまでの生気の薄れた顔はそこにはなかった。

トオル:「・・・俺、自分が許せない。・・・ノエルのことを『好き』だと思っていたはずなのに・・・信じることさえしなかったなんて・・・。」
クロケット:「・・・そういうもんでケロ。・・『好き』なんて感情は一方通行な想いでしかないケロ。だからこそ、相手を思う気持ちだけの独りよがりな思いが『好き』って感情なんだケロ。・・・相手を信じるなんて愚かケロよ。」
トオル:「違うっ!!」
クロケットの言葉に、叫ぶようにして『否定』するトオル。

トオル:「・・・『好き』という感情は、確かに一方通行名独りよがりな感情なのかもしれない。・・でも、それ以上に相手のことを思いやることや信じることが出来ない『好き』なんて・・・そんなのおかしいじゃないか。」
クロケット:「・・ならどうするケロ?・・・居もしない『彼女』を探してこの空間を永遠に彷徨うケロ?」
トオル:「・・・いるよ。ノエルはここにいる。・・・俺は『信じる』!!・・もう迷わない。・・・俺は『ノエル』が『好き』だから・・だから、彼女を『信じる』。
・・『運命の絆で結ばれている』んだから!!」
その時だった。

<―――ピカッ!!>
トオルの声に反応したかのように光が辺りを包み込む。
トオルは、その光り輝く方へと目を向ける。
その時、その光の中に『影』が浮かび上がるのが見えた。

光は徐々に薄れ、眩んだ目は段々とその視力を回復しつつあった。
その光の中から現れたのは―――。

トオル:「・・ノ、ノエル?」
ノエル:「・・トオル。・・本当に、トオルなんだね。」
お互いに信じられないといった表情で相手を見ていた。

トオル:「ノエルっ!!」
ノエル:「トオルっ!!」
二人は相手の名前を呼び、『ギュっ』と抱きしめあった。
それは、この世界に来て二人にとって初め互いに『好き同士』だと認識した瞬間でもあった。

抱きしめあっていた身体を少し緩め、お互いの顔を見やる二人。
段々とその顔が近づいていく。

トオル:「・・・ノエル、好きだ・・・。」
ノエル:「・・私も、トオルが好き。」
言葉にして、初めてお互いの思いを確認しあった二人。
さらに、顔は近づいていった。

ノエル:「―――――ん」
ノエルの口から吐息が漏れる。
・・今、二人の唇は自然に重なり合っていた。

どのくらい『そう』していたのだろうか・・・・・?
いつの間にか唇が離れ、トオルとノエルはお互いを見つめあったままだった。

クロケット:「ア―――・・・ケロ。そろそろ、良いケロか?」
気まずさそうに、声をかけるクロケット。
二人はその声に『ハッ』と我に返った。

クロケット:「・・まずは、『おめでとう』と言わせてケロ。・・・よく、あの『試練』を乗り越えたケロ。・・・どうやら、『ときあい』を得るだけの『資格』はある
ようだケロ。」
ノエル:「・・・『資格』?」
クロケット:「・・そうだケロ。『ときあい』を得るには、最低限として二人の『絆の深さ』が必要だったケロ。」
トオル:「・・それで、あの砂漠の場所に俺たちを行かせたのか?・・・『絆の深さ』を試すために。」
クロケット:「・・平たく言えばそうなるケロ。・・感謝するケロよ。」
勝ち誇ったかのようなクロケットの顔に、二人は『ムッ』とする。

クロケット:「・・・何だケロ?・・その顔は。・・・言っておくケロが、『ときあい』を探してるのはおまえらだけじゃないケロよ。」
ノエル:「!!・・どういうことよ、それ?」
クロケット:「・・・選ばれたる者とは、『ときあい』を得ることの出来る・・・言わば『候補生』でケロ。これから二人には、『ときあい』を得るに相応しいかどうかを決める『試練』を受けてもらうケロ。」
トオル:「・・・クロケットは『ときあい』がどんなものなのか知っているのか?」
クロケット:「・・もちろんだケロ。・・しかし、教えられないケロよ。なぜなら、聞いた者は『資格』を失うケロ。」
そう言ったクロケットの顔が悪戯っぽい笑みに見えたのはトオルだけじゃないだろう。

クロケット:「・・じゃあ、早速『ときあい』のある『舞台』に行くケロよ!!」
言うが早いか、クロケットを中心に穴が生まれ、トオルとノエルはまっさかさまに落ちていくのであった。


★★★あとがき☆よこく★★★
どうも、なおふみんです^^
なおふみん式『トラベル☆ラブストーリー(時超恋愛)』の第五回です^^
予告どおり、第一部完結としたいとこなんですが、管理人のh−yama氏から第一部・第二部と分けずに6話・7話としていくということで、『連載』に変更させてもらいました。
それに伴って、『完結』ではなく『続く』といった終り方になったことをここでお詫びしますm−−m(ペコリ
てなわけで、全15話ということでこれからもよろしくお願いします^^v
さて、初めてお互いに『隙』という認識をしあった二人ですが・・・『ときあい』に
はまだまだ長い道のりがありそうです。
次回からは、『新キャラ』が数人登場します。
もちろん、『ときあい』と関係のある『キャラクター』たちばかり・・・。
どうなるトオルとノエルの『ときあい』探し。
新章となる第6話をお楽しみに^^v
では^^/

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